【質問者】
霜田雅之 国立国際医療研究センター研究所 膵島移植プロジェクト長
【遺伝性膵炎は認知度が低く,未診断例が多く存在すると考えられる】
まず,遺伝性膵炎の疫学について解説します。全国の入院施設を要する医療機関を対象に2005〜14年にかけて全国調査が行われました1)。100家系271例(男性153例,女性118例)の患者の情報が収集できました。患者の平均発症年齢は18.1歳で,5歳までに23%,20歳までに68%が初回膵炎を発症していました。小児期から若年成人期に膵炎を発症することが多いようです。逆に60歳以降に発症している患者もおり,たばこ,飲酒などの二次的な要因が膵炎発症のきっかけになることもあります。初回発作から20歳までに膵外分泌機能不全や糖尿病を発症する症例はそれぞれ10%ならびに5%以下でした。
経過観察中に注意しなければならない点は,遺伝性膵炎の患者では膵癌のリスクが一般人口よりも高いことです。この全国調査でも膵癌の家族歴は100家系中25家系に認められ,膵癌の危険率は40歳までに2.8%,60歳までに10.8%,70歳までに22.8%と推計されています1)。なお,遺伝性膵炎は2015年1月から小児慢性特定疾病(慢性消化器疾患,大分類:遺伝性膵炎)に,同年7月からは成人の指定難病に認定されています。患者認定に当たり,小児慢性特定疾病では「対象基準」が,指定難病では「重症度分類」が設定され医療費助成対象者を決定しています。
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