安倍晋三内閣は6月2日、「骨太方針2016」、「日本再興戦略」、「規制改革実施計画」と「ニッポン一億総活躍プラン」(以下、「プラン」)の4つを閣議決定しました。例年は、「骨太方針」が最重要とされてきましたが、安倍首相は「プラン」を強調し、8月3日に行った内閣改造後の記者会見でも、「一億総活躍の旗を一層高く掲げる」と述べました。
そこで今回は「プラン」について検討します。併せて、7月15日に発足した厚生労働省「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現本部」の資料「地域包括ケアの深化・地域共生社会の実現」も検討します。この本部は、「プラン」中の厚生行政に関わる施策を中心に、今後の厚生行政全般の「グランドデザイン」を検討すると考えられるからです。
まず、「プラン」の概要を述べます。「1.成長と分配の好循環メカニズムの提示」は、「今後の取組の基本的考え方」として「一億総活躍社会」を示し、大きな目標として、「名目GDP600兆円」、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」の3つを掲げ、「この的に向かって新しい三本の矢を放つ」と宣言しています:①希望を生み出す強い経済、②夢をつむぐ子育て支援、③安心につながる社会保障
「2.一億総活躍社会の実現に向けた横断的課題である働き方改革の方向」では、以下の3つの目標を挙げています:①同一労働同一賃金の実現など非正規雇用の待遇改善、②長時間労働の是正、③高齢者の就労促進。以上から、「プラン」は「3つの矢・的」と「働き方改革」を二本柱としていると言えます。
3〜5では、前述の的に向けた取り組みの方向を示しています。そのうち「4.『介護離職ゼロ』に向けた取組の方向」は4つで、2番目が「健康寿命の延伸と介護負担の軽減」です。「5.GDP600兆円に向けた取組の方向」は16で、2番目が「世界最先端の健康立国へ」です。最後の「6.10年先の未来を見据えたロードマップ」は各矢ごとに具体的「対応策」を細かく示しています。
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