診療ガイドラインは、「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」1)と定義され、患者と医療者の協働による共有意思決定(shared decision making)2)の促進を目指している。診療ガイドライン作成過程への患者・市民の参画は必要不可欠とされており1)、診療ガイドラインの評価やウェブサイトへの公開を行っている公益財団法人日本医療機能評価機構の医療情報サービス事業Minds(マインズ)は2014年に患者・市民専門部会を設置し、患者・市民の参加のあり方について検討を進めているところである。
筆者の一人である栗山は、東京大学医療政策人材養成講座の卒業研究として患者団体(計196団体)に対する調査を行い、患者団体は「患者の生の声」を医療政策に生かしたい意向があるにもかかわらず、立案する側とうまくマッチングができていないことを報告した3)。その結果を踏まえ、2004~06年度厚生労働科学研究「『根拠に基づく診療ガイドライン』の適切な作成・利用・普及に向けた基盤整備に関する研究:患者・医療者の参加推進に向けて」(主任研究者:中山健夫)の一環として、患者や患者支援者(以下、患者・支援者)が診療ガイドライン作成委員会に参画する際の手続きについて検討した。
その結果、2007年3月に『診療ガイドライン作成過程への患者・支援者参画のためのガイドライン(Patient Involvement Guidelines、以下、PIGL)』第1版を公表するに至った4)。
PIGL第1版は、日本小児アレルギー学会の『家族と専門医が一緒に作った小児ぜんそくハンドブック2008』5)や、新型インフルエンザ対策関連情報(『新型インフルエンザ対策(A/H1N1)ぜんそくなどの呼吸器疾患のある人へ』6)および『新型インフルエンザ対策(A/H1N1)糖尿病または血糖値が高い人へ』7))の作成にあたって活用された。
PIGL第1版公表から10年近くが経過し、診療ガイドラインをめぐる状況も当時から大きく変化したことから、改めて、筆者3人の合議により、第1版を改訂したPIGL2016を作成するに至った。本稿では、PIGL2016の骨子を紹介する。
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