B型肝炎(hepatitis B:HB)は,B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)の感染により引き起こされる肝炎である。感染経路として,垂直感染と水平感染がある。宿主の免疫状態により,急性肝炎,非活動性キャリア,慢性肝炎,肝硬変などの病期が存在する。HB既往感染例(HBs抗原陰性かつHBc抗体陽性またはHBs抗体陽性)においては,免疫抑制薬やがん化学療法によりHBVが再活性化して劇症化することがある。
急性肝炎では,感冒様症状や倦怠感,嘔気,食欲不振などが生じる。肝障害が進行すると,黄疸や褐色尿を認める。慢性肝炎では,症状はほとんどない。肝硬変では,黄疸,浮腫,腹水,肝性脳症などが生じる。
急性肝炎はIgM-HBc抗体が高値である。6カ月以上HBs抗原持続陽性例はB型慢性肝炎であり,DNA量3.3LogIU/mL以上かつALT 31U/L以上の症例は活動性があり,肝生検やフィブロスキャンなどにより肝硬度を診断する。また,血小板数やFIB-4 index, M2BPGiなどの血液検査でも肝線維化を評価できる。特に,線維化進展例は肝細胞癌(HCC)のリスクが高く,AFP,PIVKA-Ⅱなどの腫瘍マーカーおよび画像検査による定期的サーベイランスが必要である。
B型慢性肝炎の初回治療として,ペグインターフェロン(PEG-IFN)とエンテカビル水和物,テノホビル,などの核酸アナログ製剤がある。B型肝硬変では核酸アナログ製剤が推奨される。HBV感染予防にはHBワクチンが有用である。
ゲノタイプAによる急性肝炎は遷延化,慢性化の割合が高いことが知られており,遷延化あるいは慢性化と判断された段階で核酸アナログ製剤の投与を考慮する。
性感染が主たる感染経路であるB型急性肝炎では,HIV感染合併の可能性があり,核酸アナログ製剤投与前にHIV検査が必須である。HIV合併例ではエンテカビル水和物は禁忌である。
肝硬変にはPEG-IFNを投与しない。
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