No.4723 (2014年11月01日発行) P.16
緑川早苗 (福島県立医科大学 放射線健康管理学講座准教授)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-03-17
東日本大震災に続いて発生した東京電力福島第一原発事故に伴う健康リスクへの対応として、福島県では「県民健康調査」が行われている。その一つとして、原発事故当時概ね0歳から18歳であった子供たちの甲状腺検査が2011年10月から行われ、現在約3年が経過しようとしている。この間、当連載でも甲状腺検査が何度か取り上げられ、検査の意義や実施状況、スクリーニングの考え方などが述べられてきた。今回は、内分泌内科医として甲状腺検査に日々関わっている経験をもとに、甲状腺検査の在り方について、検査を受ける子供たちとその母親の視点に立って考えてみたい。
県民健康調査に関する第16回検討委員会(今年8月24日開催)において、福島の子供たちにとって第1回目の検査にあたる「先行検査」の結果概要(暫定版)が報告され、検査の受診率は80.5%(29万6026人)と非常に高いこと、対象者の99%以上が次回検査まで精査加療を必要としないA判定であったこと、対象者の0.8%が精密検査(二次検査)が必要とされ、約100人の方が甲状腺癌またはその疑いとされたことなどが報告された1)。
受診率の高さは住民特に母親たちの放射線誘発甲状腺癌に対する不安の大きさを反映していると思われる。現在は、対象者にとって2回目の検査となる「本格検査」の1巡目(今年度から来年度予定)が行われている。対象者の利便性を図るために、検査は持ち運びできる超音波検査機器を学校や保健センターなどの公共施設に持ち込んで行われている。土日・祝日を除くほぼ毎日、福島ではおおむね1日500〜600人の対象者が甲状腺超音波検査を受けていることになる。福島県ではこの検査を継続的に繰り返し行うこととしており、2016年度(平成28年度)以後については今のところ20歳になるまでは2年ごと、それ以降は5年ごとの実施を予定しており、検査体制の充実のために、県内外の拠点病院での検査実施などの事業も進んでいる。
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