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強直性脊椎骨増殖症[私の治療]

No.5114 (2022年04月30日発行) P.45

岡田英次朗 (せたがや岡田整形外科院長,慶應義塾大学医学部整形外科講師(非常勤))

登録日: 2022-05-01

最終更新日: 2022-04-27

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  • 脊椎および関節の腱・靱帯付着部に発生する非炎症性疾患であり,胸椎右前方の不規則な骨増殖が特徴とされる。びまん性特発性骨増殖症と同じ疾患概念である。軽微な外傷で容易に不安定な脊椎損傷をきたし,遅発性麻痺を生じることが報告されている。頸椎では骨増殖による嚥下障害をきたし,Forestier(フォレスチエ)病と呼ばれる。
    有病率は成人以降で8.7~25.6%であり,メタボリックシンドロームや糖尿病との関連が報告されている。50歳以降の男性に多い傾向がみられる。発生高位は,中下位胸椎より徐々に頭尾側方向へ進展する。

    ▶診断のポイント

    Resnickら1)の診断基準が用いられる。①「flowing」と形容される石灰化または骨化を少なくとも4つの連続した椎体で認めること,②罹患領域で,椎間板腔が比較的保たれていて,vacuum現象や椎体辺縁の骨硬化などの椎間板変性を示唆する所見を認めないこと,③仙腸関節部でのerosion,硬化,骨癒合を認めないこと,のすべての条件を満たす。

    【症状】

    腰背部痛などの疼痛がなく無症候性に強直が進行する。単純X線撮影を行い,初めて診断されることが多い。

    診療上で最も注意すべきは,軽微な外傷もしくは外傷歴がなくても脊椎損傷をきたす場合があることである2)。脊椎強直をきたしている患者が腰背部痛を訴える場合には,強直部位での脊椎損傷の可能性を考え,必要であればCTやMRIを追加する必要がある。頸椎発生例では,下咽頭を後方から骨増殖が圧排することで嚥下障害をきたすことがある。強直部位が下位腰椎に至る場合には,強直による可動域低下を認める。また,主に強直椎の下端の非強直椎間で変性がみられることにより,強い腰痛や脊柱管狭窄による坐骨神経痛をきたす。

    【検査所見】
    〈単純X線〉

    診断の基本となる。「flowing」と形容される,蠟が垂れるような不整な骨増殖がみられる。頸椎は左右差なく前方へ,胸腰椎は大血管を避けて右前方に骨増殖が伸展する。

    〈CT〉

    単純CTでは椎体の骨増殖の形状や椎間強直が詳細に評価でき,脊椎損傷を疑った際には最も有効であるため,躊躇なく施行する。骨折線がわかりにくいことがあるので,横断像だけではなく,矢状断や冠状断も用いた評価を行う。

    〈MRI〉

    腰背部痛だけではなく,神経症状を呈している場合には必要とされる。可動椎間の椎間板変性も評価できる。

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