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急性膵炎[私の治療]

No.5117 (2022年05月21日発行) P.47

殿塚亮祐 (東京医科大学臨床医学系消化器内科学分野講師)

糸井隆夫 (東京医科大学臨床医学系消化器内科学分野主任教授/同大学病院副院長)

登録日: 2022-05-22

最終更新日: 2022-05-17

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  • 急性膵炎は,胆石,アルコール摂取,その他(脂質異常症,薬剤性,遺伝性,先天異常,外傷,腫瘍など)を原因として,膵臓および全身性の急性炎症を引き起こす。重症例においては多臓器不全を合併し,人工呼吸器管理や血液浄化療法などの全身管理が必要になる場合もあるため,慎重な病態の診断も非常に重要である。死亡率は2.1%(重症例で10.1%)と報告されており,成因や病態に応じた適切な治療がきわめて肝要である。

    ▶診断のポイント

    急性膵炎は,①腹部症状(上腹部痛・圧痛),②血中あるいは尿中の膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ)上昇,③急性膵炎画像所見(体外式腹部超音波・腹部CTやMRIによる膵腫大や周囲の炎症性変化)の3項目中2項目を満たし,かつ他の膵疾患や急性腹症を除外できた場合に診断される。原因に関しては,胆石などの既往や,アルコール摂取歴,薬剤歴,家族歴の聴取とともに,画像検査による胆石や先天異常の有無などの精査を速やかに行い,予後因子と造影CTグレードによる重症度判定を行う。

    予後因子としては,以下1項目1点で,3点以上が重症と診断される。
    ①base excess≦-3mEq/Lまたはショック(収縮期血圧≦80mmHg)
    ②PaO2≦60mmHg(room air)または呼吸不全(人工呼吸器管理を必要とするもの)
    ③BUN≧40mg/dL(もしくはCr≧2mg/dL)または乏尿(輸液後も1日尿量400mL以下)
    ④LDHが基準値上限の2倍以上
    ⑤血小板数 ≦10万/mm3
    ⑥総Ca値 ≦7.5mg/dL
    ⑦CRP≧15mg/dL
    ⑧全身性炎症反応症候群(SIRS)診断基準陽性項目数≧3〔SIRS診断基準項目:(1)体温>38℃または<36℃,(2)脈拍>90回/分,(3)呼吸数>20回/分またはPaCO2<32mmHg,(4)白血球数>1万2000/mm3もしくは<4000/mm3または10%超の幼若球の出現〕
    ⑨年齢≧70歳

    造影CTグレードに関しては,炎症の膵外進展度と造影不領域の程度を,それぞれスコア化し,2点(Grade 2)以上を重症とする1)

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    急性膵炎の急性期における軽症および重症に共通した治療のコンセプトは,①血管透過性の亢進による循環血液量の低下に対する大量の輸液,②患者の苦痛や腹腔内圧の亢進の回避のための鎮痛薬投与,③腸内細菌感染予防のための早期(48時間以内)からの経腸栄養,④臓器不全の予防と治療,である。

    元来,経験的に行われてきた蛋白分解酵素阻害薬や,予防的抗菌薬投与,膵局所動注療法などは,エビデンスが不十分であり,現在は行わなくなってきている。重症例においては,呼吸循環動態の不安定や,臓器不全が危惧あるいは予想される場合には,速やかなICUへの転床を躊躇なく行う。そして,厳重なモニタリング下で,呼吸不全に対する人工呼吸器管理や,循環動態が不安定で利尿が得られない場合には血液浄化療法を行う。

    胆石性膵炎においては,胆管炎合併例や,総胆管や乳頭へ嵌頓し膵液の流出障害が予想される場合には,速やかに内視鏡的逆行性膵管胆管造影を行い,結石嵌頓の解除と可能であれば内視鏡的乳頭括約筋切開術まで行う。局所合併症に関しては,腹痛や発熱などの有症状例,増大例などで超音波内視鏡や経皮的,外科的ドレナージを行う2)3)

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