わが国では、何か大きな事故が起こると、関連法を改正して予防対策を強化することが散見されます。
平成11年の11月に東名高速道路で乗用車が飲酒運転のトラックに追突され2人の幼児が死亡する事故が起きました。その後刑法が改正され、危険運転致死傷罪が新設されました。また、平成18年の8月には福岡県内の橋上で、乗用車が飲酒運転の車両に衝突されて海上へ転落し、3人の幼児が死亡しました。これを受けて、飲酒運転に対する罰則がさらに引き上げられ、酒類の提供など飲酒運転を助長する行為が直接処罰されるようになりました。
特に飲酒運転に対してはこのような厳罰化が続いています。これらの対策が功を奏したのか、平成11年に飲酒死亡事故(原付以上の運転者による)が1257件であったのが、令和2年には159件まで減少しました。もちろん、これは死亡事故件数のみですから、背景には飲酒運転による重傷や軽傷事故、さらには事故に至らない例も多々あると思います。
昨年6月、千葉県の八街市で下校中の小学生の列に飲酒運転のトラックが衝突し、5人が死傷する事故が発生しました。その後、政府は交通安全対策に関する関係閣僚会議で、「通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策」を決定しました。その中で、自動車を一定数以上保有する使用者に義務付けられている安全運転管理者等の未選任事業所の一掃が図られ、アルコール検知器を活用した酒気帯びの有無の確認が促進されました。
乗車定員が11人以上の自動車を1台以上保有する事業所または乗車定員にかかわらず5台以上の車両を使用する事業所では、安全運転管理者を選任することが義務付けられています。安全運転管理者を選任した後に、所轄警察署への届け出が必要です。
さらに安全運転管理者には年に1回の講習受講が義務付けられています。まずは、この選任を徹底させるということです。
次に、本年4月より、事業所の安全運転管理者は運転の前後に、目視によって酒気帯びの有無を確認しなければなりません。すなわち、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子を確認します。さらに、10月1日からはアルコール検知器を使用して酒気帯びの有無を確認することが定められました。そして、確認した内容を1年間保存しなければなりません。すなわち、実施者名、運転者名、車両の登録番号、実施日、実施方法、酒気帯び運転の有無などです。
今までは事業用自動車の運転者に対して義務付けられていたアルコールチェックが、一般の(白ナンバーの)運転者にも義務付けられました。先生方の施設でも患者さんの送迎用に大型車を保有していたり、5台以上の車両を保有しているところがおありかと思います。安全運転管理者の選任とアルコールチェックが義務付けられましたので、速やかにご対応くださいませ。
なお、呼気検査では、口臭対策などのスプレーを使ってもアルコールは消えません。血液中濃度と相関することも分かっています。