アデノウイルスは小児の感染症の中で比較的よく遭遇する病原体であり,気道感染をはじめとして腸炎,角膜炎,膀胱炎,髄膜炎といった感染症を引き起こす。咽頭結膜熱は主に3型や7型などの血清型によって引き起こされるアデノウイルスの症候群であり,5類感染症に指定されている。潜伏期間は5~7日程度であり,感染経路は飛沫感染および汚染された手指やタオル等の媒介物が口や鼻,眼に触れることで感染する接触感染(糞口感染)である。感染力は強く,古典的にはキャンプやプールなどでの集団感染で知られる。
発熱・結膜炎・咽頭炎が三徴であるが,多少の上気道症状を伴うこともある。咽頭所見は白苔を伴い,赤みが強いことが特徴であるが,見た目だけでの判別は実際には困難であることが多い。イムノクロマト法を使った迅速抗原検査では咽頭後壁や口蓋扁桃からの拭い液で簡便に施行できるが,その感度・特異度は分離培養法との比較で感度62~87%程度,特異度は95~100%程度である。
咽頭結膜熱では比較的長期間の発熱や眼球結膜充血,頸部リンパ節腫脹などから川崎病との鑑別が必要となることがある。その他,咽頭炎や頸部リンパ節炎を伴うことから,EBウイルス,溶連菌などとの鑑別も重要である。
アデノウイルス感染症は一般的なウイルス感染症と同様に自然経過で軽快する。特異的な治療法はなく,対症療法によって症状の軽快を待つことが基本的な対応となる。発熱やその他の症状に伴い,経口摂取不良を認める場合には補液を行う。
学校保健法では主要症状が消退した後,2日を経過するまで出席停止となる。咽頭炎として経過観察していた際に結膜炎も出てきたときは出席停止の話も伝える必要がある。咽頭結膜熱の診断には,必ずしもアデノウイルスの検出は必要ではない。
咽頭結膜熱の結膜炎は症状がさほど強く現れないが,8型,19型,37型などによる流行性角結膜炎では角膜浮腫,眼瞼浮腫が強く出現し,流涙や眼脂を伴う。流行性角結膜炎でも咽頭炎を伴うことはあるため,眼症状が強い場合は眼科への紹介も必要となる。
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