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ラジオ体操+プチ断食 /ラジオ体操する人たち /緊急事態発生? [なかのとおるの御隠居通信 其の6]

No.5139 (2022年10月22日発行) P.64

仲野 徹 (大阪大学名誉教授)

登録日: 2022-10-19

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定年隠居生活も半年を過ぎました。驚くほど規則正しく健康的な生活をおくっていて、主観的には若返った気がしているほどです。その理由のひとつは、毎朝ウォーキングを兼ねて通うラジオ体操ではないかと。

ラジオ体操+プチ断食

毎朝6時ちょうど、イマヌエル・カント並みの正確さで家を出て、時速約6.5kmで花博記念公園鶴見緑地まで歩いていく。30分ほどで到着し、2段飛ばしでの階段駆け上がりを3本繰り返すと6時半、「♪あたらしぃ朝がきたぁ~」というラジオ体操の歌が聞こえてくる。メタセコイア並木を眺める一等地でラジオ体操をして、再び速歩で帰宅する。一休みしてから、20坪ほどの家庭菜園の世話をしてようやく朝食だ。

 

さまざまなダイエット法を試みてきたが、最近は「14時間ダイエット」にはまっている。これは、毎日10時間以内に食事をすませ、14時間はプチ断食をするという方法である。痩せるかどうかはわからないが、このやり方には科学的裏付けがないわけではない。14時間断食するとオートファジーが誘導されるというデータがあるのだ。

夕食は7時に食べ終わるので、朝食は9時以降になる。お腹が空いて我慢できないのではないかと案じていたが、そうでもない。体を動かし始めるとあまり空腹感を感じなくなるようで、決してつらくない。それに、畑仕事をしてからゆったり朝食を摂るのは、精神衛生上とてもよろし。かように、隠居でないと考えられないような贅沢な朝を過ごしている。バチあたるかも。

ラジオ体操する人たち

日によってちがいがあるが、およそ200~300人が集まって体操をしている。一糸乱れず、と言いたいところだけれど、そうでもない。周囲の人に合わせればよさそうなものだが、独自路線の体操をする人もいる。そういう人の動きが目に入るとペースが乱されてしまうので、決して近づかない。

この会場は、すぐ近くに民家がないせいか、近所にある他の会場に比べると、やや平均年齢が低めである。といっても70歳は超えていそうだ。これは他の会場と同様、夫婦で来ている人は非常に少ない。どうしてなんやろ、って、我が家も私だけやけど。

そんな中、奇特なご夫婦参加者がおられる。ラジオ体操の音源の方を向いて体操する人がほとんどなのだが、そのご夫婦は、お二人で向かい合って体操をされるのだ。よほど仲良しなのだろうか。うらやましいような、全然うらやましくないような……。

前日の予報で降水確率の高かった日は明らかに人出が少ない。そんな日にも来ている人たちはやりたくてたまらないのかというと、そうでもなさそうだ。ちらっと聞き耳を立てていると「昨日は雨やというとったのに晴れとるがな」とか文句をたれてる人が結構いたりするのがおかしい。みんな、ホンマはちょっとさぼりたいんやわ。

緊急事態発生?

7月31日は「1000万人ラジオ体操・みんなの体操祭」だった。どう考えても1000万人もラジオ体操してないやろ、というツッコミはさておき、この日の番組は特別編成だった。いつもはラジオ体操第一・第二で10分だけなのだが、その前に「みんなの体操」というEテレでしかやっていない体操が付け加えられた15分番組になっていた。

時間通りに放送が始まったのだが、流れてくるのは聞き慣れない「みんなの体操」の音楽。会場に広がる大きな戸惑い。みなさん毎日ラジオ体操会場で体操をしておられるので、ほぼ同じ時刻に放映されているテレビ体操は経験がないのだろう。

ふっふっふ。しかし、私は違う。元々はテレビ体操をやっていたので、「みんなの体操」もできる。ひとりキビキビと体操したのだが、なんやこの人はという感じで、かえって変な目でみられてしもた。なんでやねん!

会場によっては、設置されているスピーカーから、定時になると自動的にラジオ体操の番組が流れる仕掛けになっている。残念ながら、鶴見緑地は大規模会場なのに、そんな設備がない。ボランティアのおじさんが、毎日、大きなラジカセを持ってきてくださっている。誠にありがたいことだ。

ある日のこと、そのおじさんの姿が見当たらない。ご病気でもされたんだろうかと心配になる。もちろん、大音量ラジカセもない。あらら、どうしたらええのかしらんと思っていたら、バックアップという訳ではないだろうけれど、小さなラジオを持ってきている人がおられて、それで体操をすることに。ただし、音量が小さく聞き耳をたてるような感じでいまひとつ気合がはいらず。

ラジオ体操は、気象警報などの発令で番組が中断されることがある。そんな状況になってもさすがに「みんなの体操祭」の時みたいに困惑が広がったりはせず、さも音楽が続いているかのごとく体操を続けていかれる。ただし、体内時計に差があるのか、微妙にずれていく。そして再開。なんと、私はからだの動きと音楽がぴったりだった。

どやっ、と思ったけど、誰も気にしてくれてませんでしたわ。っちゅうようにラジオ体操を楽しんでいるこのごろです。

仲野 徹 Nakano Toru
大阪市旭区生まれ。1981年阪大卒。2022年4月より阪大名誉教授。趣味は読書、僻地旅行、義太夫語り。『仲野教授の笑う門には病なし!』(ミシマ社)大好評発売中!

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