慢性膵炎とは,膵臓の内部に不規則な線維化,細胞浸潤,実質の脱落,肉芽組織などの慢性変化が生じ,進行すると膵内外分泌機能低下を伴う病態である。腹痛・背部痛の頻度が高く,進行とともに疼痛は軽減するものの,消化吸収不良や膵性糖尿病が発生する。多くの場合,非可逆性とされる。
2009年,「慢性膵炎臨床診断基準2009」において,慢性膵炎の診断基準が改訂され,早期慢性膵炎の概念が取り入れられた1)。従来のものは,進行した慢性膵炎を診断するための基準であり,予後の改善には直結しなかった。しかし,新しい基準は早期に慢性膵炎を診断し,治療介入することで,生命予後の改善をめざしたものとなっている。早期慢性膵炎は,反復する上腹部痛発作,血中/尿中膵酵素値の異常,膵外分泌障害,大量飲酒歴のうち2項目以上が認められ,かつ特徴的な画像所見を有するものとされた。画像所見は,超音波内視鏡(EUS)が積極的に用いられ,EUSによる微細な膵実質所見と内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)による分枝膵管所見が重視されている。EUS像は,蜂巣状分葉エコー,不連続な分葉エコー,点状高エコー,索状高エコー,囊胞,分枝膵管拡張,膵管辺縁高エコーが特徴的とされる。
非可逆的と考えられていた慢性膵炎の中に早期慢性膵炎の概念が加わったため,今後は早期治療介入が膵炎の進展阻止へとつながるという証明が大切となる。そのためには,長期的に経過観察し,前向きの臨床研究を行うことも必要である。
【文献】
1) 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班, 他:膵臓. 2009;24(6):645-6.
【解説】
1)岩田恵典,2)西口修平 兵庫医科大学肝胆膵内科 1)講師 2)主任教授