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“And yet it moves”(船越忠直)[プラタナス]

No.5142 (2022年11月12日発行) P.3

船越忠直 (慶友整形外科病院・慶友肩関節センターセンター長)

登録日: 2022-11-12

最終更新日: 2022-11-09

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  • “先生、何年かぶりに150km/h投げることができました”

    彼と初めて出会ったのは随分と前のこと。最速152km/hの有望硬式野球投手であったが、右肩痛のため当院を紹介受診された。自分なりに痛みの原因を調べ診察や検査の結果、理由について多くの質問をしてきた患者さんであった。当院でリハビリを行い改善傾向であったが思い切り腕を振れないため、手術も提案したがパタリと受診しなくなっていた。改善したのなら良いのだが、と思っていたところ、しばらくして再度受診された。実は他院にて低侵襲で復帰が早いと勧められ手術を行ったが術前より痛みが強くなり、再手術は難しく術後の競技復帰率はきわめて低いことを告げられ、絶望感に浸っていたそうだ。

    私は、痛みの原因は関節唇ではなく肩関節不安定性にあると判断し、彼は“もう一度全力で投げられるなんて夢のようなことが起きるなら”と、他院と異なる術式の再手術の決断をした。理学療法士と一緒に、彼自身の努力で、できることはすべて頑張る、という姿勢を貫いた結果、術後1年で148km/h、術後数年経過したものの150km/hという目標を達成したと報告を頂いた。

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