財政制度等審議会は11月29日、「令和5年度(2023年度)予算の編成等に関する建議」をまとめ、鈴木俊一財務大臣に提出した。社会保障では、「ウィズコロナへの移行と全世代型への制度改革」と題して、新型コロナウイルス感染症対応の補助金や診療報酬上の特例、後期高齢者医療制度における高齢者の負担率―などの見直しを求めた。
医療保険制度では、現役世代の負担上昇の抑制と「負担能力に応じた負担」の実現が喫緊の課題だとし、▶後期高齢者医療制度における現役世代1人当たり支援金の伸びを後期高齢者1人当たり保険料の伸びの水準までに抑える制度改正の早急な実施、▶被用者保険間の格差是正のため、前期高齢者納付金を前期高齢者の加入者数に応じた調整から報酬水準に応じた調整に移行―などを提言した。
医療機関の経営実態については、足下の医療費の動向などから22年度の医療費とコロナ関係補助金の合計額は49兆円程度になると試算。このことから「医療機関の経営は近年になく好調となることが窺える」とし、コロナ対応の補助金や診療報酬上の特例は、「個々の項目ごとに早急に縮小、廃止を検討するべきだ」と訴えた。
個別施策ではリフィル処方箋について、22年度の診療報酬改定時に見込んだ医療費効率化効果(医療費ベースで470億円程度)を達成できたのか、早急な検証が必要だと指摘。制度の普及促進に向け、積極的な取組を行う保険者を各種インセンティブ措置で評価する案も示した。
23年度の薬価の中間年改定については、「物価高における国民の負担軽減の観点から対象品目を広げ、完全実施すべきだ」と主張。既収載品目の算定ルールの適用対象を実勢価改定に連動しないルールにまで広げることや、調整幅の段階的縮小なども求めた。
医療提供体制では、かかりつけ医機能を強化するための制度整備が不可避との認識を改めて強調した。現行の医療機能情報提供制度や診療報酬上の評価を見直す必要性も指摘。特に「機能強化加算」について、「本来は初診患者の中でもより継続的な管理が必要な疾患を有する患者への算定が期待されながらも、算定の実態がまったく異なっており、外来機能の分化につながっていない」と問題意識を示した。