エーザイは1月7日、米バイオジェンと共同開発したアルツハイマー病(AD)疾患修飾薬レカネマブについて、米国食品医薬品局(FDA)より迅速承認を取得したと発表した。米国での販売名は「レケンビ(LEQEMBI)」。エーザイの内藤晴夫CEOは同日開いた記者会見で、1月23日の週までに発売する予定の「レケンビ」の米国での価格について「年間2万6500ドル」と設定する方針を説明するとともに、日本でも2023年中の承認を目指して2022年度内のできる限り早い時期にレカネマブの承認申請を行う考えを示した。
米国での迅速承認は、ADの特徴である脳内に蓄積したアミロイドβプラークの減少効果を示した臨床第Ⅱ相試験(201試験)の結果に基づくもの。エーザイは同日、レカネマブがプラセボに対し27%の悪化抑制を示すことなどを確認したグローバル臨床第Ⅲ相検証試験(Clarity AD試験)のデータを用いて、フル承認への変更を求める申請書類をFDAに提出。11日には欧州医薬品庁(EMA)への承認申請を行ったことも発表した。
米国で承認されたレカネマブの適応症は「ADの治療」。用法・用量は「治療開始前にアミロイドβ病理が確認された患者に対して10㎎/kgを推奨用量として2週間に1回点滴静注」とされた。
レカネマブによる治療は、アミロイドβ病理が確認されたADによる軽度認知障害(MCI)または軽度認知症の患者において開始する必要がある。実際には、早期ADと診断されたMCIや軽度認知症の患者に対しアミロイドβ検査(アミロイドPET検査やCSF腰椎穿刺検査)を行い、アミロイドβ陽性と判定された場合に投与可能となる。
エーザイは、レカネマブなどのAD疾患修飾薬の投与対象となる米国の早期AD患者は、3年後に約10万人と推計。血液バイオマーカー(国内では島津製作所が開発中)などの侵襲性の低い新しいスクリーニングや診断技術の今後の進歩を考慮すると、患者数は中長期的に徐々に増加していくと予測している。
7日の記者会見で内藤CEOは、「質調整生存年(QALY)の増加分」などから米国の早期AD当事者1人当たりの「レケンビ」の年間社会的価値を3万7600ドルと推定し、その上で、薬にアクセスしやすくするため、米国での発売価格(年間卸業社購入価格)を2万6500ドルと設定することを決めたと説明。日本での承認申請時期については「1日も早く(申請するため)いま必死にやっている」と述べた。
日本での価格設定については、現行の薬価算定制度に則って規制当局との交渉を進めるとしながら、日本での年間社会的価値も算出し、交渉の場に持ち出す意向を示した。
内藤CEOは、FDAからの迅速承認は「(7日早朝の)4時近くに(社内連絡の)電話で知った」と述べ、「『コングラチュレーション』という言葉に涙が一滴出た」と喜びを語った。