子どもの甲状腺がんと検査をテーマにした「第5回福島国際専門家会議」(日本財団主催)が先月26〜27日、福島市で開催された。チェルノブイリ原発事故から30年の教訓を生かそうと、国内外の放射線の専門家など約200人が参加し、活発に議論した。
1986年に発生したチェルノブイリ原発事故では、高いレベルの放射性ヨウ素で汚染されたミルクを飲んだことで誘発された小児甲状腺がんが事故の4〜5年後に発生したことが証明されている。放射線被ばくの不安に対する社会的要請から、福島県では2011年10月より、事故当時に18歳以下だった約38万人を対象に超音波による甲状腺検査を実施。これまでに、135人が甲状腺がんと診断されている。
検査について住民と議論を
会議では放射線の影響について多くの専門家が「福島は放射線量が幸いにも低く、チェルノブイリとは事情が違う」「原発事故後に見つかった甲状腺がんは放射線の影響とは考えにくく、過剰診断の可能性が高い」と強調した。
過剰診断とは、生命を脅かさないがんを発見することで、甲状腺がんは剖検によって一定の割合で潜在がんとして発見されることが報告されている。多くの先進国では、超音波検査の精度向上と検査機会の増加により甲状腺がんの罹患率と手術件数が増加する一方、死亡率は変わっておらず、過剰診断・治療が問題になっていることが複数の専門家により指摘された。
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