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脳転移への定位放射線治療(SRS)【SRSを行うことで全脳照射の回避を推奨】

No.4914 (2018年06月30日発行) P.57

徳植公一 (東京医科大学放射線科特任教授)

登録日: 2018-07-02

最終更新日: 2021-01-07

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頭蓋内小病変に対する定位放射線治療(SRS)は,有効性が実感できる治療であったために,臨床試験による検証なしに1990年代に急速に広まった1)。その後,脳転移については標準治療である全脳照射との間で多数の臨床試験が施行された。

RTOG 9508では1~3個の脳転移に対して全脳照射を標準治療と考えて,1回照射のSRSの追加の有無を比較する試験において,転移の数が1個の場合にはSRSの追加により生存期間の改善がみられることが示された2)。これとは逆に,JROSG 99-1では1~4個の脳転移に対してSRSを標準治療と考えて全脳照射の追加の有無を比較すると,この追加により生存期間の延長はないが新脳転移の発生頻度が減少する,という結果であった3)。非小細胞肺癌に対する予防的全脳照射の有無によって1年生存率に差はなかったが,MMSE,EORTC QLQ-C30などの代表的な認知機能測定法では差は認めないものの,思い出し機能は全脳照射投与群で有意に低下した4)

これらの結果からASTROの「賢い選択キャンペーン」では,SRSに全脳照射を追加すると認知機能の低下,生活の質の低下をまねく可能性があるので,治療後は定期的に経過観察して,できるだけ全脳照射を回避することを推奨している5)

【文献】

1) Larson DA, et al:Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1994;28(2):523-6.

2) Andrews DW, et al:Lancet. 2004;363(9422): 1665-72.

3) Aoyama H, et al:JAMA. 2006;295(21):2483-91.

4) Sun A, et al:J Clin Oncol. 2011;29(3):279-86.

5) Choosing Wisely®. [http://www.choosingwisely.org/astro-releases-second-list/]

【解説】

徳植公一 東京医科大学放射線科特任教授

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