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分子標的薬と放射線治療

No.5025 (2020年08月15日発行) P.49

星 章彦  (武蔵野赤十字病院放射線科部長)

登録日: 2020-08-12

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【分子標的薬併用療法の適応は限定的だが,様々な重複による影響に注意が必要】

がん細胞の増殖・転移に関わる分子を標的とする治療薬(分子標的治療薬)が次々と開発され,2000年前後から使われてきた。局所進行がんに対しても化学放射線療法と同様併用療法の研究が進み,06年Bonnerらが頭頸部癌において上皮成長因子受容体(EGFR)抗体であるセツキシマブと放射線治療の併用で生存期間が延長することを示し1)わが国でも承認されたが,いまだこれのみで,対象も化学放射線療法困難例にとどまっている。

血管新生阻害薬も臨床試験が進んでいるが,ベバシズマブの重大な副作用のひとつとして瘻孔(0.3%)が挙げられており,発現例の多くは骨盤部への放射線治療歴のある患者であったことが報告されている。併用禁忌や慎重投与ではないが,安易に骨盤照射とかぶらないよう注意が必要である。分子標的薬では対象分子を発現する細胞に作用するため副作用が少なくなると考えられたが,従来とは異なった症状が出現することがあり,注意が必要である。

EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)は肺癌によく用いられるが,併用療法では間質性肺炎の問題などもあり,期待されたほどの効果は得られていない。一方,従来の抗癌剤と比較し小分子で髄液移行性が良好なこともあり,進行がんの予後延長も期待できる中,多発脳転移を有していてもEGFR-TKIを先行することで全脳照射による晩期有害事象が回避できる可能性があり,治療方針の転換が図られつつある。

【文献】

1) Bonner JA, et al:N Engl J Med. 2006;354(6): 567-78.

【解説】

星 章彦 武蔵野赤十字病院放射線科部長

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