【immuno-radiotherapyとして今後の適応拡大が期待】
これまでがん治療として様々な免疫療法が行われてきたが,近年免疫応答のメカニズムが解明されつつあり,免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場によって,手術・放射線・抗癌剤に次ぐ「第4の治療」として注目を浴びている。しかし,ICI単剤での奏効率はおよそ20%で十分とは言えず,効果的な併用療法の開発が期待されている。
以前から放射線治療医の間では,稀な現象ではあるが局所治療であるはずの放射線治療により,照射部位と離れた別の病巣も同時に縮小する現象(アブスコパル効果)が知られており,放射線治療による宿主の免疫の増強が考えられた。悪性黒色腫に対し,ICIのイピリムマブと放射線治療の併用療法で約半数の症例にアブスコパル効果が認められたとの報告1)まであり,放射線治療との併用による全身性の抗腫瘍免疫の活性化と,放射線治療の局所効果を組み合わせたimmuno-radiotherapyが注目されてきている。
放射線治療による細胞死は抗原提示を促進し,がん抗原特異的なT細胞の細胞障害活性を誘導するが,一方サイトカインによりPD-L1が発現し,T細胞の攻撃を抑制する。そこで抗PD-L1抗体を投与することで,抗腫瘍免疫応答が回復しがん細胞を排除する治療が検討された。非小細胞肺癌に対し化学放射線療法後に維持療法として抗PD-L1抗体デュルバルマブを投与するPACIFIC試験2)で全生存期間の延長を認め,わが国でも承認された。
【文献】
1) Grimaldi AM, et al:Oncoimmunology. 2014;3: e28780.
2) Antonia SJ, et al:N Engl J Med. 2018;379(24): 2342-50.
【解説】
星 章彦 武蔵野赤十字病院放射線科部長