【診療報酬で1回線量増加加算が算定できるように】
放射線治療では,1回2Gy前後の線量で平日に連日5~7週間かけて治療することが多い。治療効果と有害事象のバランスから古典的分割照射として考えられてきたが,近年,放射線生物学的検討もふまえ,1回2Gyを超える線量で照射しながら総線量は減らし,有害事象の増加を避けつつ治療効果も落とさない寡分割照射が取り入れられてきた。必要な通院日数が減少し,患者の精神的・時間的負担の軽減,経済的負担の軽減,医療施設にとってもスタッフの負担軽減になり,医療資源を有効活用することで患者数の増加にも対応できることから,社会的にも有益性が高いと考えられる。
最近の乳癌,前立腺癌患者を中心とした放射線治療患者数の増加から,就労世代の乳癌温存術後における50Gy/5週間の治療や,限局性前立腺癌に対する強度変調放射線治療70数Gy/8週間近くといったものに対し検討された。欧米の先行するデータから,「乳癌診療ガイドライン」では2006年版から08年版への改訂で,「前立腺癌診療ガイドライン」では12年版から16年版への改訂で,寡分割照射がクリニカルクエスチョンとして取り上げられた。1回線量2.5~3Gy,10回2週間程度照射回数を減らすなどの臨床試験が行われ,わが国では乳癌でJCOG0906での2.66Gy,16回,総線量42.56Gy,前立腺癌ではH-IGRA Studyでの2.5Gy,28回,総線量70Gyが主に使われている。
治療回数の減少が単純に医療施設の減収とならず,取り組みを推進していくため,乳癌で16年,前立腺癌で18年から,診療報酬で1回線量増加加算が算定できるようになった。
【解説】
星 章彦 武蔵野赤十字病院放射線科部長