中央社会保険医療協議会は3月8日の総会で、新型コロナウイルス感染症治療薬のゾコーバ錠の薬価収載を了承した。薬価は125mg1錠7407.40円、1治療当たりでは5万1851.80円。感染の再拡大で市場規模が急激に拡大した場合を想定し、市場拡大再算定の特例(特例拡大再算定)を適用する際の薬価の下げ止めについて、通常の場合よりも引き下げ率が大きくなる特別ルールを設ける。薬価収載予定日は3月15日。
同剤は、市場規模が年間1500億円超になると見込まれる品目を対象にした、高額医薬品のルール(2022年度薬価制度改革で新設)を初めて適用。薬事承認後、通常の薬価算定手続きに先立って中医協総会で薬価算定方法を検討し、2月15日に方針がとりまとめられている。
同方針に沿って、ゾコーバ錠の薬価は「類似薬効比較方式(Ⅰ)」で算定し、比較薬には、新型コロナ治療薬の「ラゲブリオカプセル200mg」とインフルエンザ治療薬の「ゾフルーザ錠20mg」を選定。両剤のゾコーバ錠との類似性の程度は同等と判断し、両剤の1治療当たり薬価の平均値をゾコーバ錠(1錠7054.70円)の薬価とした。これに「有用性加算(Ⅱ)」(5%)を上乗せし、最終的な薬価は1錠7407.40円となった。
市場拡大再算定の適用を判断する際の基準となる、予測市場規模は192億円(市販後2年度目のピーク時、予測投与患者数37万人)に設定した。2月にまとまった薬価算定の方針では、市場規模の拡大に速やかに対応して薬価を引き下げられるよう、年間販売額が極めて大きい場合(1000億円超、または1500億円超)が対象になる特例拡大再算定の適用の判断には、コロナ患者の発生状況や出荷量などから算出した年間販売額の推計値を用いることが決まっている。
ただ、その際に薬価引き下げ率の上限(いわゆる下げ止め)をどうするかについては結論が出ず、薬価収載時に改めて議論するとしていた。このため厚生労働省は同日の総会に、年間販売額が予想販売額の10倍以上に急拡大し、かつ3000億円を超えた場合に限り、引き下げ率の上限を現行の50%から66.7%(薬価の2/3)に引き上げる案を提示し、了承された。当該取扱いはゾコーバ錠に限定した特別ルールとし、仮に適用した場合はその後の対応状況を含む、価格調整の妥当性などの事後検証を行うこととする。