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【識者の眼】「盛会裏に開催された第9回LMC研究会」邉見公雄

No.5162 (2023年04月01日発行) P.65

邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)

登録日: 2023-03-13

最終更新日: 2023-03-13

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去る1月21日、私共が4年前に立ち上げたNPO「地域医療・介護研究会ジャパン(略称:LMC)」の第9回研究会が京都で開催された。現地参加とオンライン参加の合計208名と多くの方々に御参加いただいた。

テーマは「コロナと医療DX」。基調講演2題のうち1つは旧友の尾身茂先生。今回のコロナの総括として「コロナの今までとこれから」の演題でお話し頂いた。まず10年前のSARSの時の提言“金澤レポート”1)の想定通りの経過で、もっと早く対応すべきだったと。また2類から5類ヘの移行は慎重にステップを踏むべきで、明らかに普通のインフルエンザとは異なるのを再認識すべきと熱く語られた。会の後、参加者から「テレビで観る尾身さんと違い熱血漢なんですね」との感想を多く頂いた。彼は元々熱い男なのであるが、この国のメディアで本当の姿はわからないのがよくわかっただけのことである。

基調講演の2つ目は東京医科歯科大学名誉教授の田中博先生にパーソナルヘルスレコードのメガバンク化やNDB化などによる、疾病予防や創薬までの可能性を論じて頂いた。先生の考えでは医療の第1革命は抗生物質、第2は分子標的薬、第3がこれであり、希少疾患の方々の治療なども可能と。続いて京大名誉教授の吉原博幸先生から千年カルテの現況と課題など。日本の問題点はプライバシー保護の法律が少し厳し過ぎ、本人死亡や来院しなくなった方のデータが死蔵されてしまうと。次に京都大学診療情報学教授の黒田知宏先生より京大での電子カルテの取り組みなどを伺った。

最後に、医療資源の少ない地域でDXなどを使いながら頑張っておられる御三方からご報告を頂いた。北海道松前町立病院長八木田一雄先生から医師5〜6人でドクターカーやドクターヘリも使った救急医療。看護師募集などにもDXを使用と。隠岐島前病院で御活躍の白石吉彦先生からは、情報発信が僻地離島では大切と。天草市病院事業管理者竹中賢治先生からは、広大な天草市に点在する4つの病院+診療所の機能分化と連携、ダウンサイジングで統廃合から守った苦労話を。最後に、参議院議員・川田龍平先生や繁本護・京都2区自民党支部長、井上一徳・京都5区日本維新支部長から医療・食糧・エネルギーなど日本の安全保障に関する大所高所からのご意見をいただき幕を閉じた。

次回第10回記念は9月16日、黒川清先生や藤澤正人先生などの御講演を予定している。読者諸兄姉も御参加を‼

【文献】

1)新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議(金澤一郎座長)報告書. 2010年6月10日.

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/dl/infu100610-00.pdf

邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[新型コロナウイルス感染症][医療DX]

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