「あれっ?〇〇さんじゃない?えっ?」 声にこそ出なかったが、私は驚きを隠せなかった。気づかれないよう、そっと斜め後方から見る位置を変え確認した。瓜二つ、双子など様々な想像が頭の中を駆け巡り、スーパーの弁当売り場で私は混迷していた。高齢男性がスーパーで昼飯を選ぶ姿はごく日常的である。しかし、その信じ難い光景に、弁当は何にしようかという、私の本来の目的は既に吹き飛んでいた。いつもの車椅子はなく、レジかごを持ち意欲的に弁当を選ぶ姿は診察室からは想像できなく、別人と結論しかかったとき、いつも車椅子を押していた〇〇さんの妻の姿を見つけ確信に変わった。
残り684文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する