3月28日に、2022(令和4)年度滋賀県チャイルド・デス・レビュー(CDR)体制整備モデル事業の報告書と提言を副知事に提出しました。滋賀県は、15歳未満の子どもの割合が人口の13.6%と高く、沖縄県に次いで全国2位です。したがって、少子化時代において、子どもの生命を守り、安全を確保していくことは滋賀県における大きな目標のひとつです。
CDRとは、子どもが死亡した際に、子どもの既往歴や家族背景、死に至る直接の経緯等に関する様々な情報を複数の機関から収集し、専門家により死因の検証を行うことです。そして、防ぎうる死の予防や、質の高い医療や支援体制を構築することを目的としています。
滋賀県では2020年度から厚生労働省(厚労省)のCDR体制整備モデル事業に参加し、初年度は多くの事例を検証して様々な知見を得ることができました。しかし、厚労省が公表したモデル事業の手引きが2021年度から改訂され、大きな壁が生じました。この壁があることによって、本来検証されるべき事例の一部が検証できない、ということになりました。その1点目は、原則として保護者の同意を必要とすること、2点目は司法解剖の結果を用いることができないことです。
保護者の同意ですが、保護者が不適切な養育を行っていた場合や虐待例などで、同意を得ることは妥当ではありません。また、子どもの自殺例や家庭内の事故などでは、保護者が同意しにくい傾向があります。これでは、本来のCDRの目的が達成できません。
一方で、CDRは成育基本法など法で定められ、厚労省および地方公共団体の遂行する事業です。個人情報保護法第17条には、本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得できる例外規定として、「国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき」が掲げられています。
したがって、保護者の同意を得ずに事業を実施することも可能と考えられます。
2点目ですが、司法解剖は異状死のうち犯罪性やその疑いがある場合に行われます。特に乳幼児では、原因不明の死亡直後では、不適切養育の疑いが完全に否定できないことが多いです。したがって、司法解剖で多くのことが解明されますが、結果的に病死であることも多いです。その場合は、司法当局は捜査や調査を終了しますので、司法解剖結果をCDRに用いても捜査の妨げにはなりませんし、刑事訴訟法に抵触することはありません。
したがって、関係機関との話し合いを行い、支障がない範囲で情報を共有するべきです。
ちなみに滋賀県では、CDRの委員に警察本部や検察庁の方が入っていますので、円滑に運用できています。CDRは子どもの死亡を予防するために有用であることはもちろんのこと、ターミナルケアや家族へのグリーフケアを含めた子どもをめぐるより良い医療体制への構築にも有用です。
この目的を達成するために、不合理な壁は取り除いて頂きたいです。