本年5月8日から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が感染症法の5類感染症へ分類されました。その結果、患者の隔離や外出自粛を求めることもなくなり、季節性インフルエンザ等と同じ対応になります。
感染症法では診断した医師に届け出の義務があります。すべての医師が、診断したすべての患者を届けなければならないのは、1類から4類感染症、5類感染症の一部(全数把握の疾患)および新型インフルエンザ等感染症です。特に1類から4類は直ちに最寄りの保健所に届けなければなりませんが、先生方が遭遇する可能性が高い疾患としては、2類の結核、3類の腸管出血性大腸菌感染症、4類のつつが虫病などがあります。
5類感染症で全数把握の疾患は、一部を除いて7日以内に届け出ることになっています。これには、梅毒、破傷風、百日咳などが含まれます。2018年から、5類感染症に含まれる麻疹、風疹、侵襲性髄膜炎菌感染症については、診断後直ちに届け出るように変更されました。これは人から人への感染力が強く、積極的な疫学調査による迅速な予防対策をとることが必要と判断されたからです。
5類感染症のうち、定点把握疾患は水痘、手足口病、流行性耳下腺炎などですが、これは指定された医療機関の医師が届け出るもので、COVID-19はこれに含まれることになります。
2017年に風疹患者数は91人でしたが、2018年には2941人に急増しました。国は特定感染症予防指針を発し、2020年までに風疹患者をゼロにすることを目的として、風疹の定期接種を受ける機会が少なかった、昭和37年4月~昭和54年4月生まれの男性を対象に、風疹の抗体検査を前提とした上で定期接種を行いました。その結果、風疹患者は2020年には101人、2021年には12人と減少しました。
このように、全数把握に基づき、効果的予防対策をとることで、感染症を予防することができます。
近年増加している感染症として梅毒があります。全数把握疾患ですが2021年には7983人と、2012年の約9倍となっています。そして、2022年は患者数が約1万3000人とのことです。
私が勤務している矯正施設でも、梅毒に罹患している若い女性が散見されます。多くは無症状ですが、聞き取りによる性生活や皮疹などの診察所見で疑われ、血液検査により診断が確定します。感染者は梅毒についての知識を持たず、奔放な性生活を送った結果、感染したようです。性感染症の危険性について教育することが重要ですが、矯正施設に収容される人では、このような教育は受けていません。
5類感染症には、性感染症として、性器クラミジア、性器ヘルペスウイルス、淋菌感染症、尖圭コンジローマなども含まれ、それぞれ多くの罹患者がいます。届け出に基づいた実態をもとに効果的な予防対策が必要です。特に性感染症では、性行為に伴う危険性を説明し、コンドームの適切な使用や早期に検査を受けることの重要性を啓発する必要があります。
家庭での教育がされていない若者がほとんどです。私たち医療従事者が中心となった啓発が必要のようです。