中央社会保険医療協議会は6月14日、2024年度診療報酬改定に向けた個別課題の議論に入った。働き方改革がテーマとなったこの日は、20年度改定で新設された「地域医療体制確保加算」を巡り、意見の応酬があった。同加算の算定医療機関において、月の時間外労働時間が80時間以上の医師の割合が20年から22年にかけて増加したことから、支払側の一部は廃止も視野に入れた検討を要請。診療側は今後の働き方改革の推進にあたり、同加算の存在は必要不可欠だとして廃止に強く反対した。
「地域医療体制確保加算」は主に救急医療に従事する医師の処遇改善を目的とした評価。算定医療機関数は22年9月現在で1045施設に上るが、厚生労働省のデータでは、これら施設における時間外労働が月80時間(上限規制のA水準/年960時間に相当)以上の医師の割合は20年の5.18%から22年は5.76%へと、増加したことが明らかになった。
このため支払側からは十分な効果を上げているとは言い難いとして、見直しを求める声が相次いだ。眞田享委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長代理)は、「これまでの延長線上の評価の引き上げや要件の緩和だけでなく、時短の取組がいっそう進むような見直しや、より効果の高い項目への重点化が必要だ」と指摘。松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「加算の継続も含めて検討が必要であり、仮に続けるなら計画の策定だけでなく、実際に時短につながっているなどの実績を要件にするべきだ」と述べた。
これに対して診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、医師の働き方改革は24年4月の時間外労働への上限規制導入からが本番だとし、現時点で加算の効果を判断するのは時期尚早と表明。「廃止はあってはならない。もっと有効・有意義に活用するにはどうしたらいいのかといった、前向きな議論をするべきだ」と反論した。
医師の業務負担軽減では、病院薬剤師の有効活用を求める意見が多く出た。ただ、病院薬剤師の確保は、薬局薬剤師との給与格差が大きいことなどから困難なのが実情。支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は対応策として、「看護職員処遇改善評価料」の財源による賃上げが可能な職種に、病院薬剤師を加えてはどうかと提案した。