【概要】社会保障制度改革のプログラム法に基づく医療保険制度の見直しに向けた議論が医療保険部会でスタートした。後期高齢者医療制度支援金の負担のあり方を巡り意見が分かれた。
社会保障審議会医療保険部会(遠藤久夫部会長)は19日、昨年12月に成立した社会保障制度改革プログラム法に基づく医療保険制度全体の見直しに向けた議論を開始した。同日の部会では、高齢者医療制度・市町村国保・被用者保険をテーマに意見交換が行われた。
高齢者医療制度では、プログラム法で検討課題とされた後期高齢者医療制度支援金に対する「全面総報酬割の導入」が焦点となった。後期高齢者医療制度は社会全体で高齢者医療を支える観点から、高齢者の保険料が1割、残りの9割を現役世代の支援金と公費で賄う仕組みとなっている。支援金の被用者保険者間の負担割合については1/3を総報酬割、2/3を加入者割で按分する方法を2010年度から導入しているが、主に中小企業が加入する協会けんぽの財政が悪化し国費が投入されている現状を踏まえ、厚労省は全面総報酬割を導入したい考えだ。総報酬割導入により協会けんぽの財政負担は年間2100億円軽くなるため、国費投入は一部削減されるが、削減分については、運営主体を市町村から都道府県に移管する予定の国保の赤字補填に充てる方針。国保は毎年3000億円の赤字を計上しており、市町村の一般会計から繰り入れが行われている。
●「国の財政責任を被用者保険に転嫁」
全国後期高齢者医療広域連合協議会会長を務める横尾俊彦委員(佐賀県多久市長)は「負担能力に応じた公平性の観点から導入するものと考えている」として全面総報酬割導入を支持。一方、白川修二委員(健保連)は同日付で田村憲久厚労相に提出した被用者保険関連5団体の連名による要望書を読み上げ、導入自体には一定の理解を示したが、協会けんぽへの国庫補助削減分を国保の赤字補填に流用する手法については「国の財政責任を被用者保険に転嫁するもの」として強く反対した。また制度の持続可能性を高めるために「現役世代の納得性の確保が必要」と強調し、新たな公費投入により現役世代の負担増に歯止めをかけるよう訴えた。
●総報酬割で半数以上の健保組合が負担増に
全面総報酬割を導入すれば、所得が多い加入者を抱える保険者は負担増となる。厚労省は「負担増」の健保組合が899、共済組合が81、「負担減」の健保組合が503、共済組合が4と試算しており、負担増となる健保組合は全体の6割を超える見通し。多くの保険者が負担増となることで保険料率が引き上げられ、現役世代には負担増となることが確実だ。
これを受け、樋口恵子委員(高齢社会をよくする女性の会)は「保険者間の公平性も重要だが世代間の公平性の視点も欠かせない。高齢者でも一定の所得がある場合は負担する必要がある」と指摘した。
【記者の眼】保険財政の悪化から被用者保険では毎年保険料率が引き上げられている。28日に開かれる次回会合では、負担のあり方について厚労省案が示される予定だが、現役世代への負担増をどの程度に設定するかに注目が集まる。(T)