中央社会保険医療協議会は7月5日、次期診療報酬改定に向けて入院医療全般について議論した。「急性期一般入院基本料」の算定病床に入院する患者の一定割合を認知症や要介護状態の高齢者が占め、これらの病棟が介護施設等からの救急搬送の主な受入先になっていることから、急性期病棟と地域包括ケア病棟の機能分化の促進を巡って、多くの意見が交わされた。
厚生労働省のデータによると、看護配置7対1の「急性期一般入院料1」の届出病床数は2021年以降微増。22年度の実態調査によると、その入院患者のうち要介護・要支援者は合わせて3割弱、認知症患者は15%程度を占めている(「不明」は除く)。一方、「地域包括ケア病棟入院料」は22年度改定時に、一般病床から届出を行う場合には救急告示病院等であることを新たに要件として求める見直しが実施された。亜急性期機能の強化を狙ったものだが、地域包括ケア病棟を有する医療機関の年間救急搬送受入件数は「100件以下」が最も多い。介護施設や福祉施設からの入院患者の受入先では「急性期一般入院料1〜7」の算定病棟が全体の75%を占める一方、「地域包括ケア病棟入院料1~4」は7%にとどまっている。
このため厚労省は、急性期病棟と地域包括ケア病棟の機能分化を促進し、個々の患者の状態に応じた適切な医療資源が投入される効率的で質の高い医療の提供を推進することを、入院医療の論点の1つとして提示した。
これに対し診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「機能分化を診療報酬で強引に誘導すれば現場の混乱を招く」と危惧を示し、現場の実態や影響を十分勘案しながらの慎重な検討を要請。池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、医療機関の連携体制が整った地域では、救急隊員が患者の状態に適した搬送先医療機関を選定するトリアージがしっかりできているなどと説明し、「高齢者救急は地域包括ケア病棟が対応する」という硬直的な取扱によって現場の裁量が狭められることがないよう、自由度の高い制度設計を促した。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、認知症や要介護状態の高齢者は急性期病棟ではなく、リハビリ関係職種の配置が厚い地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟での受け入れが望ましいとし、「急性期からの“下り搬送”の件も含め、急性期病棟の機能分化について検討する必要がある」との認識を示した。