敗血症(sepsis,セプシス)が、感染症における全身性炎症および炎症性サイトカインストームの病態として国際的に定義されたのは1992年である1)。そして、2016年より敗血症は、感染症において臓器機能不全が進行する病態として再定義された2)。その時代背景の中で、集中治療医学のアイデンティティが、臓器機能不全の進行を抑制する医学として発展してきている。
これまでの敗血症の認知を高める活動は、2002年10月の欧州集中治療医学会におけるバルセロナ宣言3)に遡る。敗血症による死亡率を5年間で25%低下させる活動として、Surviving Sepsis Campaign(SSC)が開始された。バルセロナ宣言では、初期活動として、①敗血症の認知の増加、②敗血症の正確な診断法の確立、③一貫した診療手順と適切な治療法の確立、④世界標準の敗血症ガイドラインの作成、⑤敗血症の診療支援と教育体制、⑥集中治療室の入退室前後の一貫した診療の質の維持─という、6つのアクションプランが提案された。そして、世界標準の敗血症ガイドラインとして、2004年に初めてSSC Guidelines(SSCG)4)が公表され、わが国からも12年より4年ごとの改訂として、「日本版敗血症診療ガイドライン」が公表されるようになった。
バルセロナ宣言の目標とした2007年を越えても、敗血症の認知と治療成績を高める活動が国際的に必要とされた。2010年にニューヨークで開催されたMerinoffシンポジウムにおいて、Global Sepsis Alliance(GSA)が結成され5)、敗血症の認知を高める活動として毎年9月13日をWorld Sepsis Day(世界敗血症デー)と定めた。敗血症の重症化を防ぎ、敗血症からの救命率を高める活動が継続されている。2017年5月26日の世界保健機関によるWorld Health Assemblyでは、敗血症の改善、予防、診断、管理を目的とした決議が採択され、敗血症が世界における健康上の優先課題とされた。
現在、GSAは2030年までに、①感染予防策の徹底による敗血症発症率の低下、②行政主導の感染症予防・抗菌薬の適正使用・敗血症の早期発見と早期治療の政策立案、③早期認知システムと救急診療の標準化、④罹患者すべてへの世界におけるリハビリテーションの普及、⑤専門家だけではなく一般市民への敗血症認知と理解の向上、⑥敗血症の社会への負の影響の明確化─という、6つを達成目標としている。発展途上国における衛生面や学術面での発展、敗血症診療への早いアクセス、さらに罹患後のリハビリテーションの普及が必要とされている。本年も、9月13日に世界敗血症デーが開催される。世界各国での活動内容がGSAのウエブサイト6)で共有されるので、ご確認いただきたい。
【文献】
1)American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference:Crit Care Med. 1992;20(6):864-74.
2)Singer M, et al:JAMA. 2016;315(8):801-10.
3)Slade E, et al:Crit Care. 2003;7(1):1-2.
4)Dellinger RP, et al:Crit Care Med. 2004;32(3):858-73.
5)Czura CJ:Mol Med. 2011;17:2-3.
6)Global Sepsis Alliance公式サイト.
https://www.global-sepsis-alliance.org
松田直之(名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野 教授)[バルセロナ宣言][SSC][敗血症の最新トピックス㊹]