編著: | 千代孝夫(野崎徳洲会病院救急センター) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 196頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2023年02月25日 |
ISBN: | 978-4-7849-6684-4 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
OTC薬、次亜塩素酸、新型タバコ…
遭遇頻度が高い24物質を掲載
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1章 総論
急性中毒診療の原則(千代孝夫)
2章 各論
A 農薬
1 グルホシネート,グリホサート(堀江勝博/一二三 亨)
2 有機リン(喜屋武玲子)
B ガス
1 一酸化炭素(綾田 亮/藤田 基)
2 塩素ガス(西 紘一郎)
C 家庭用品
1 界面活性剤(武山直志)
2 カフェイン(杉田 学)
3 タバコ―特に小児誤食例への対応―(千代孝夫)
4 トイレ洗剤(山口 均)
5 次亜塩素酸(早川 桂)
6 ボタン電池(宮本颯真/大谷典生)
7 家庭用品の中で安全なもの(遠藤容子/波多野弥生)
D 産業用品
1 有機溶剤(清水弘毅)
2 シンナー(井上貴昭)
3 エチレングリコール(藤野靖久)
4 メタノール(有吉孝一)
E 自然毒
1 毒キノコ(小野寺 誠)
2 フグ毒(辻本登志英)
3 ヘビ毒(堺 淳)
F 薬物濫用
1 危険ドラッグ(木内俊一郎)
2 覚醒剤(松本俊彦)
3 OTC 薬(広瀬由和/廣瀬保夫)
G 医療用医薬品
1 睡眠導入剤(宮内雅人)
2 精神神経用剤(嶋津岳士)
3 アセトアミノフェン(福本真理子)
巻頭言
わが国の医学の歴史的な潮流により,医師の専門分化が進んでいます。昔の医師は診療科にかかわらずすべての疾患を診ていましたが,今や「私は消化器疾患しか診ない」とするのみならず,「肝胆膵のみ」,さらには「膵臓のみを診る」と限定するようになりました。その状況への反動として,ジェネラリスト,救急医,総合診療医,プライマリ・ケア医等が期待されて現れました。
本誌は,そういった各科の専門医ではない医師に,明日からすぐに役立つ知識,情報の提供を目的として刊行されるものです。
今回,取り上げた「中毒」の領域は,系統的な教育体系や専門科がないため,知識の伝播がなされず,一般医家には嫌われることの多い分野です。
多種多様な疾患を診なければならないジェネラリストに必要な知識は100点ではなく,80点でよいと思います。脳動脈瘤破裂を例にとれば,“いかに誤診を避けるか”,初診時の“do not” や“must” が最も重要であり,専門的な治療や投与薬剤の容量を知ることが必須ではないと思われます。また,知識のすべてを暗記する必要もありません。その都度検索すればよいのです。ジェネラリストに一番持って頂きたいのは,“疾患に関する最新の正しい概念”だと思います。
本書では,起因物質別に,それぞれのエキスパートに「一般診療において役立つ情報(どういうものか)」,「参考となる今までの知見」,ジェネラリストとして「治療法=やるべきこと」と「やってはならないこと」,「過去の常識,今の非常識」,「専門医へ送る基準」について解説して頂いています。起因物質としては,遭遇頻度が高く,特殊な対応が必要になるものとして,24物質を選定しました。なお,中毒診療の基本的な考えは,総論の「急性中毒診療の原則」を参考にして下さい。
本書によって,中毒に対する読者の苦手意識が取り払われ,日常臨床の中で中毒患者が迅速に治療されること,かつ,すべての症例が無作為に専門機関に転送されることがなくなることを願っています。