著: | 中西信人(神戸大学災害・救急医学分野) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 160頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2024年06月12日 |
ISBN: | 978-4-7849-2485-1 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
「臨床での筋肉評価を勉強したいのに,教科書がない!」
「筋肉評価を実践してはいるけど,正しくできているのか自信がない」
「エビデンスが知りたい…」
- そんな悩みに答える“筋肉評価の初めての教科書”ができました!
●身体計測,CT,エコー,体組成計,DXA…それぞれを解説する書籍はあっても,筋肉評価に特化した書籍はありませんでした。
●本書では,それらを用いた筋肉評価の具体的ノウハウについて,基礎から具体的な方法,基準値,様々な分野におけるエビデンスまでを網羅して解説します。
●筋肉を正しく適切に評価することは,患者さんの栄養状態評価,リハビリテーションなどの治療介入の評価を行う上で重要です。
●小児から高齢者,急性期,慢性期,在宅など,セッティングを問わず様々な臨床現場で実践できる筋肉評価の決定版です!
第Ⅰ章 総 論
1 筋肉とは
2 筋肉の働き
3 様々な医療分野における筋肉の重要性
4 サルコペニアの定義
5 リハビリテーションにおける筋肉の評価
6 栄養状態に関する筋肉の評価
7 筋肉評価とは
8 筋肉評価の現状
第Ⅱ章 身体計測による評価
1 上腕周囲長
2 下腿周囲長
3 指輪っかテスト
第Ⅲ章 CTによる評価
1 CTの基礎
2 総筋肉量での評価
3 腰筋での評価
4 胸筋での評価
5 脊柱起立筋での評価
6 側頭筋での評価
アドバンスドトピックス
▶3次元で筋肉の体積を評価?
▶頚部のCTでも筋肉量評価が可能?
第Ⅳ章 エコーによる評価
1 エコーの基礎
2 定量的評価
3 定性的評価
4 大腿での評価
5 下腿での評価
6 上腕での評価
7 前腕での評価
8 側頭筋での評価
9 咬筋での評価
10 横隔膜での評価
11 肋間筋での評価
12 腹筋群での評価
アドバンスドトピックス
▶Heckmattスコアとは?
▶エラストグラフィーとは?
▶ペネーションアングルとは?
第Ⅴ章 体組成計
1 体組成計とは
2 水分量の影響
3 筋肉量評価の原理
4 体組成計の測定ポイント
5 位相角による評価
6 様々な分野におけるエビデンス
アドバンスドトピックス
▶カヘキシアインデックスとは?
▶Chamneyの補正式とは?
▶コールコールの図とは?
第Ⅵ章 DXAによる評価
1 DXAとは
2 DXAによる筋肉量評価
3 DXAによる筋肉量評価の精度
4 DXAの測定ポイント
5 様々な分野におけるエビデンス
索 引
本書『誰でもできる筋肉評価~医師、看護師、栄養士、理学療法士に必要なサルコペニア、リハビリ、栄養の評価~』は「誰でもできる」を合い言葉に,誰もが明日から筋肉評価を実施できるように具体的な方法を1冊の本にしました。医師,看護師,栄養士,理学療法士などすべての医療従事者が理解できるように執筆しました。本書は筆者が約10年かけて築き上げてきた知識や経験をまとめたものです。
筆者は2016年頃に筋萎縮ゼロプロジェクトを立ち上げ,ICUでエコーやCTでの筋肉評価を始めました。その結果,重症疾患に罹患したときに筋肉が多いほど予後が良いこと,さらに重症疾患に罹患してICUに入室する患者さんが1日に約2%の筋肉が萎縮していき,次第に立ち上がれなくなり,社会復帰の妨げになっていることが明らかになってきました。当時は筋肉評価をまとめた本はなく,手探りで行っておりました。無数の英語論文を読みあさり,国際学会で質問して方法を少しずつまとめていきました。
筋肉は健康な生活を営む上で,病気に打ち勝つための非常に重要な臓器です。筋肉量が多いほど病気になりにくく,また病気になったときも助かりやすく,社会復帰できる可能性が高くなるといわれています。実際,厚生労働省も,2023年に『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』で,筋力トレーニングの実施は生活機能の維持・向上だけではなく,疾患発症予防や死亡リスクの軽減につながるため,週に2日以上の筋力トレーニングを推奨しています。
筆者は,子どもから大人まですべての疾患において,外来や入院における体系的かつ計画的な筋肉評価が重要と考えております。心筋梗塞で心臓をエコーで,脳卒中で脳をCTで,また肝臓の疾患で肝臓をバイオマーカーで評価するように,筋肉を一つの重要な臓器として評価し,守っていくことが社会復帰のために重要です。筋肉量が低下してくるようであれば積極的なリハビリテーションや栄養療法などの介入につなげることができます。
実は医療の現場では何十年も前から身体計測の上腕周囲長などで患者の筋肉量評価が行われ
てきました。そして2010年にヨーロッパのサルコペニアガイドラインで身体計測,体組成計,DXAが筋肉量評価に必要と報告されました。2019年にはアジアでもサルコペニアガイドラインが発表されました。2016年に日本肝臓学会はCT検査を用いたサルコペニア判定基準を発表しています。また,2024年の診療報酬改定では急性期や回復期リハビリテーション病棟でGLIMクライテリアを用いた栄養状態評価が必要と記載されています。このGLIMクライテリアというのは本書で説明している筋肉量評価が必須です。このように医療現場では筋肉評価の重要性がますます高まってきているといえます。
しかし,上述のように筋肉評価を学ぶ書籍はずっとありませんでした。筆者自身も筋肉評価を実践していく上で,そのような本があればいいなと何年も切に願っていました。たとえばインターネット上のアンケート調査でも,筋肉評価を学ぶ際の障壁として,「十分な書籍がなく,教育を受ける機会がないこと」が一番の問題であることが明らかになりました。
そのような理由や背景から,「本がないなら自分で作るしかない」という思いで本書をまとめました。社会的なニーズが十分にあるにもかかわらず学ぶための本が存在しないということが,本書を発行する上でのモチベーションとなり,背中を押してくれました。
本書では身体計測,CT, エコー, 体組成計,DXAによる筋肉評価の基礎から具体的方法,基準値,また様々な分野におけるエビデンスをまとめました。CT,エコー,DXAの本はあっても,筋肉評価に特化した本はありません。加えて,体組成計の原理などをまとめた本もほとんどありません。本書は筋肉評価における新たな取り組みだと自負しています。
本書を通じて,1人でも多くの患者さんが健康な生活を送れることを願っています。どんなに重度の病気になっても,病気を治療するだけでなく,筋肉もしっかりと評価して,リハビリ・栄養をしっかりと行うことで社会復帰を目指すというメッセージをすべての医療従事者に届けたいと思います。筋肉を正しく評価して,その適切な評価に基づいた治療方針が医師によって決定され,続く看護におけるケアが実践され,加えて,管理栄養士による栄養介入,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士などにおけるリハビリテーション介入を行うことで,誰にとっても身体的に健康な未来を迎えられるよう願ってやみません。
2024年6月
神戸大学災害・救急医学分野
中西信人