一向に状況の改善がみられない医薬品供給不足状況に対応するために、日本製薬団体連合会(日薬連)は、従来3カ月ごとの医薬品供給状況調査を本年4月から毎月調査に変更し、結果を公表している。直近の7月調査結果をみても、状況改善はまったくみられていない。
日薬連では「限定出荷」を大きく「自社の事情」と「他社品の影響」にわけており、さらに限定出荷の原因を調査している。他社品影響による限定出荷の原因の大半は「需要増」であり、自社事情の限定出荷の影響を受ける形で、同成分を供給している他社の多くの製品が、注文に出荷が追いついていない状況と推察される。一方で、自社事情の限定出荷は、需要増に加え、「製造・品質トラブル」が原因の多くを占めている。製造・品質トラブルにより限定出荷を行っている企業名をみると、中規模の後発医薬品企業での件数が多いことがわかる。
厚生労働省は、後発医薬品の供給不足について「少量多品目製造」が背景にあるとし、新たに設置した「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」においても品目数削減の議論を続けている。しかし、日薬連のデータからも供給不足の原因に多品目製造があるとはいいがたく、むしろ品目数削減議論がもたらす大きな弊害を指摘せざるを得ない。
足元の供給不足の原因に、万が一にも多品目製造があるとしても、厚労省検討会の議論のような製造体制を変えるためには数年の歳月が必要になる。供給不足による医療現場での混乱は、今後も、2年、3年と継続することとなる。厚労省の的外れな議論に乗じているのか、このところ後発医薬品企業からは、薬価引き上げの要求ばかりで、自らの製造・品質問題への具体的な取り組みは示されていないと感ずる。
また、仮に品目数が削減されると、それにより医薬品入手が困難となり、むしろ供給不足が加速することも明らかである。欧米の規制当局は、安定確保のために参入企業数、品目数の増加の方針をとっているが、この点でも、厚労省の問題認識は逆転している。
厚労省検討会をみると、厚労省の委託や補助金事業に関わるシンクタンクや学識経験者が構成員となっている。これでは厚労省の描くシナリオに異を唱える議論は困難ではなかろうか。厚労省は、継続する医薬品不足に直面する現場の現状を直視し、供給不足原因について認識を再考すべきである。
坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)[薬価][後発医薬品の供給不足]