昨年11月、超党派の「国民の質の高い睡眠のための取り組みを促進する議員連盟」(睡眠議連)が発足し、今年4月には2回目の総会を開いた。日本人の睡眠に関する課題とその対策について、国際的に著名な睡眠研究者で日本睡眠学会理事、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)機構長の柳沢正史氏に聞いた。
日本人の平均睡眠時間は世界一短く、睡眠不足の人が多いことは様々な国際的データで示されています。それがどうしてなのかはわかっていませんが、明らかに社会的な要因です。
日本睡眠学会が特に問題視しているのは、適切な診断・治療を受けていない睡眠障害の潜在患者が非常に多いことです。たとえば、睡眠時無呼吸症候群の中等症以上で治療が必要なレベルの人は900万人、慢性不眠症の人は1000万人以上と推計されます。また、不登校の中高生の多くが、概日リズム睡眠障害です。
ところが、日本睡眠学会認定の専門医は全国に約600人しかおらず、1人しか専門医がいない県もあります。睡眠検査のゴールドスタンダードである睡眠ポリグラフ(PSG)検査ができる医療機関は全国に約300カ所しかなく、1000万人以上もの患者の診断・治療ができる体制ではありません。