厚生労働省の「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」(座長=樋口輝彦国立精神・神経医療研究センター総長)は1日、報告書を取りまとめた。焦点となっていた精神科病棟の居住施設への転換については、試行的に実施するとした。
入院中の精神障害者は全国で約32万人いるが、7割にあたる20万人が1年以上の長期入院となっていることが問題となっていた。
報告書は、入院医療の必要性が低い精神障害者が病院を居住の場にしている状態は「一刻も早い改善が必要」と指摘。退院支援計画の作成や、家族が相談できる機関の整備などの退院支援策を盛り込んだ。また、病床削減により空いた病棟を患者の地域移行に活用することも記載。グループホームなど居住施設への転換も選択肢とした。
ただ、居住施設への転換については「国連障害者権利条約第19条(自立した生活および地域社会で受入れられる権利)に反する」「障害者が幸せになる機会を奪う。まずは生活保護受給者に対する住宅施策が必要」など、病院の患者囲い込みへの懸念・批判も委員から強く出された。
そのため現在の入院患者を対象とする例外的なものとして、利用期間を限定、構造的に病院から独立、食事・日中活動の自由を担保─など条件を厳格にした上で「自治体と連携して試行的に実施し、運用状況を検証する」とした。
厚労省社会・援護局障害保健福祉部は、報告書の具体化に向けて省内で今後検討するとしている。