学会の理事や代議員はいまだに男性の数が多いところがほとんどである。日本外科学会もそのうちの1つである。昨今、代議員に女性を増やそうという動きにやっと立ち至っている。
この構想は実は10年以上前に既に存在した。私は日本女性外科医会の代表世話人を務めているが、この日本女性外科医会はそもそも、そのような構想の一部として設立されたものである。その当時、日本外科学会の代議員枠には外部団体推薦枠があったと聞いている。推薦をする外部団体の1つとなることをめざして、日本女性外科医会は日本外科学会の女性外科医支援委員会から設立されたものである。
ところが、この計画が実行されつつある中で、日本外科学会は一般社団法人化された。一般社団法人というのは、代議員はすべて選挙により選出されなければならず、外部団体推薦枠は許されず、上記の計画は無に帰してしまった。こうして、女性代議員の数はきわめて少ないまま10年以上の時が流れた。
この話にはもう1つ大きな問題がある。この選挙が、立候補前、投票前からかなり調整されている点である。多くの医局に属する医師が、学会の選挙前に医局に投票用紙を提出するようなことを経験しているのではないだろうか。一般的な選挙制度に照らし合わせると、かなりギリギリの線だと思う。しかし、だからと言って、勝手に投票しろと言われても、どなたに投票したらいいのかわからないことも多々経験する。
今回、このような状況の中で、日本外科学会の女性代議員を大幅に増員する計画がある。選挙前の調整の段階から女性を立候補者として挙げていき、立候補者数を定員内に収めようという方策である。なんとかして女性代議員を増加させようという日本外科学会の動きそのものは高く評価できる。むしろ、遅きに失した感さえある。しかし、方法としてはかなり苦肉の策という感を免れない。もちろん、この方策を考えられた先生方はすごいと思うが。
一般社団法人の掟を守るために女性枠をつくることができず、それでいて選挙は事前の調整が行われている、という実態は非常にバランスが悪いように思う。そもそも、国を挙げて男女共同参画を推進しようという建前(?)のもと、一般社団法人の掟がその妨げになっているということが改善すべき点である。掟は人のためにある。人権にも関わる男女共同参画を推進するためには、例外規定も必要である。マイノリティの参画のためには例外規定も盛り込んだ法律にすることを提案したい。
野村幸世(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)[一般社団法人][事前調整][例外規定]