診療報酬調査専門組織の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」は10月4日、医療機関や薬局での消費税負担について、診療報酬での補てん状況を調査することを決めた。12月には調査結果が報告される予定で、それを基に2024年度診療報酬改定での対応を検討する。補てん不足が判明した場合は、診療報酬への上乗せの議論に発展する可能性もある。
調査では、19年に消費税率が10%に引き上げられたことに伴う診療報酬による補てん(消費税率5〜10%部分)について、21年度と22年度の状況を把握する。調査対象は、現在進行中の医療経済実態調査(実調)の対象医療機関等。収入のうち、診療報酬本体に上乗せされている消費税分を把握するため、「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」から抽出した算定回数等のデータを使用する。一方、支出については、課税経費の消費税相当額を把握するため、実調の直近の事業年度のデータを使用する。
これらデータから個々の医療機関等における補てん状況を推計し、実調と同様に、開設者別、病院機能別、入院基本料別で区分して比較する。
同様の調査は22年度改定時にも実施されている。その際は、①全体の補てん率は103.9%で、医科全体、歯科、調剤それぞれをみても補てん不足になっていない、②調査対象の20年度は新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、厳密な検証を行うことが難しい―との理由から、診療報酬の上乗せの見直しは行わないとの結論に至った経緯がある。
この日の議論で診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、22年度改定時の調査で一般診療所の補てん率は87.0%だったにもかかわらず、何ら手当がされなかったことに改めて不満を表明。「今回の調査で看過できない補てんのばらつきや補てん不足がわかった場合には、適切に補てんの精緻化を図ってほしい」と強く求めた。
今回の調査の結果分析や解釈の際には新型コロナに加え、近年の物価高騰の影響をどう捉えるかが争点になるとみられるが、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「諸経費が増加する要因が様々ある中で、物価高騰分だけを切り分けるのは難しいかなという印象を受ける」との見方を示した。