中央社会保険医療協議会は10月4日、次期診療報酬改定に関する2巡目の議論を開始した。初回のテーマは在宅医療。この中で厚生労働省は、施設入所者への訪問診療が多く、看取りへの対応が少ない医療機関や、訪問診療の実績がほとんどないにもかかわらず「往診料」の算定回数が多い医療機関があることなどを課題として提示した。
訪問診療に関する厚労省のデータによると、「在宅患者訪問診療料」の算定回数が特に多い医療機関の中には、月平均の訪問診療の頻度が4回を超える医療機関や、「施設入居時等医学総合管理料」の算定割合が8割超の医療機関があり、これら医療機関は「ターミナルケア加算」や「往診料」の算定回数が少ない傾向にある。また、訪問診療の患者に対する診療時間は通常、1月の訪問回数が多いほど長くなるが、単一建物への訪問では患者数が多くなると実施回数が多い場合であっても診療時間が短くなる傾向がみられた。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は施設入所者への訪問が多く、看取り等の対応が少ない医療機関について、診療報酬上の評価を適正化するべきだと主張。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、人口減少地域などで高齢者の集住化が進む中、施設入所者への訪問が増えるのは当然のことであり、家族の意向にも左右される看取りを評価のパラメーターとするのは適切ではないと反論した。
往診では、訪問診療をほとんど行っていないにもかかわらず、「往診料」の算定回数が月100回以上の医療機関があることなどから、厚労省は、訪問診療の有無に着目した「往診料」の評価のあり方を検討課題に位置付けた。支払側はこの方向性に賛同したが、長島委員は患者の状態は様々であり、訪問診療の有無で一律に評価を定める方法は現場に馴染まないと否定的な見方を示した。
在宅療養支援診療所以外の診療所が提供する在宅医療の評価である「在宅療養移行加算」は、算定割合が低水準であることや、算定のない医療機関の多くが、周囲に連携可能な医療機関がないなど、24時間の往診体制の確保が困難な事情を抱えていることが判明。長島委員は、連携する医療機関側に診療報酬上のメリットがないことも算定が進まない一因ではないかと指摘した。