骨関節結核治療に携わるようになって四半世紀が過ぎようとしているが、振り返ってみると結核はつくづく「変わった」感染症だと思う。
たとえば脊椎結核だと、椎体が結構溶けていても不思議なくらい痛みが少ない。熱も大して出ない。CRP陰性、白血球正常範囲内、ということもめずらしくない。そんなことは教科書的な知識、と言われるかもしれないが、実際に現場で上記を目にすると、ほとんどの医者は骨転移だと考えてしまう。特に高齢患者が多いので、骨転移か下手すると単なる圧迫骨折と誤診されてしまうのだ。病変が進行して椎体圧潰による激痛、あるいは膿瘍による対麻痺を発症するに至って、初めて診断に至ることも多い。しかも、変わっているのは病態だけではない。
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