最近の報道で、高校生が大麻を所持して逮捕される、あるいは集団で大麻リキッドを使用して警察の事情聴取を受けている、などの情報を耳にします。わが国では大麻使用者が増加しています。2021年に15~64歳の国民を対象に行われた「薬物使用に関する全国住民調査」では、薬物使用に関する生涯経験率(1回でも使ったことがあるか)が明らかにされました。最も多かったのは大麻で1.4%でした。これに続くのが有機溶剤で0.9%、次が危険ドラッグで0.5%でした。さらに、大麻事犯の検挙者の約7割が20歳以下の若年者であり、中学生も含まれます。
このように、若年者で大麻の乱用が増える背景には、「大麻はそれほど体に悪くない」「海外では使用が合法化されている」「依存症になりにくい」などの情報から、大麻の害を矮小化する考えがあります。
大麻は大麻草からなりますが、この中に560種以上の化合物が含まれています。代表的なものはテトラヒドロカンナビノール(THC)とカンナビジオール(CBD)です。THCはアルコールに似た陶酔感とLSDに似た幻覚作用があり、この感覚を求めて大麻を使用するようです。THCを含有する大麻を繰り返し使うと依存症になる可能性があります。CBDについては未知な点が多く、THCのような作用や精神異存性はないと考えられています。大麻草の品種によって、これらの含有量が様々なので、一部分の情報だけで、「依存症になりにくい」と軽視されたようです。
また、米国で行われた大規模疫学調査では、薬物使用者が依存症に移行する割合が調べられました。大麻を使用しはじめた人のうち、生涯において大麻依存症になる割合は9%で、ニコチンの68%、アルコールの23%より低かったのです。これをもって、一部の人は、「大麻は、たばこや酒より害が少ない」と言っているようです。
さらに、大麻の使用が合法化されている国があります。医療用大麻として合法化されているのは、大麻草から抽出した成分を治療薬として用いるためです。一例ですが、がんの化学療法における副作用である強い嘔気に対して、制吐薬として使用されています。
嗜好用大麻が合法化されている国はカナダ、ウルグアイ、米国の一部の州ですが、合法年齢に達した人に対して、大麻の所持、生産、流通、販売、輸出入などが認められています。これらの情報をもとに、大麻使用に関するハードルを下げているようです。
インターネットによる情報の拡散によって、安易な理解のもとに若者が軽い気持ちで大麻を使用しています。最近では、大麻草に占めるTHC濃度が上昇している(1995年の4.0%から2014年の11.8%に)という報告があり、また先の報道のように、THC成分を高濃度に含む大麻リキッドなどが流通しており、依存症になる危険性が高まっています。
大麻使用者は、その後に覚せい剤など様々な薬物に手を染めることや、触法行為に及びやすいことなども指摘されています。社会全体で若年者の安易な大麻使用を根絶しなければなりません。