前2回の本欄で日本のadvance care planning(ACP)の課題について考えました。今回は、私が考える解決法を示させて頂きたいと思います。
現在、かかりつけ医の重要性が問われています。かかりつけ医は通常、「日常的に患者に接し、日常の医療を提供する医師」と考えられています。
私は、「かかりつけ医とは、その患者の疾患のみならず、生きてきた背景や家庭環境をも含めて、患者のことを一番よく知る医師」と言い換えることができると思います。かかりつけ医がなぜ大切なのか? それは「その患者のことを一番よく知っている」からだ、と言えるのではないのでしょうか。私はかかりつけ医の役割には以下の2つがあると考えています。
①患者の人生に伴走しながら、「患者が自分の人生の最期をどのように過ごしたいか」、医療者としての専門知識を提供しながら一緒に考えていく(共同意思決定とACP)
②患者と対話を重ねて至った合意である「共同意思決定」を成就できるように最後まで関わり続ける(ACPの成就)
私は①に関しては、「できるだけさりげなく」するのがいいと考えています。患者との日常的な会話の中にこそ、患者の本心が透けて見えるからです。②に関しては、かかりつけ医には自分の患者が急変したとき、急性期病院の医師と連絡を取って患者の今までの病歴を共有し、日常の医療の中で話し合ってきた共同意思決定のプロセスを急性期病院の医師に伝えてほしいのです。急変時に患者家族がどうしたらいいのか迷うのは当然だと思います。患者サイドの医療者として、患者急変時にも患者とその家族を支えてあげてほしいと思います。
この2つを担っていくことは、非常に大変なことです。この責任を医師だけに背負わせることはあまりに重すぎますし、医師だけの智恵には限界があります。
そこで私は、この仕事は「かかりつけ医」ではなく「かかりつけチーム」で担って頂くことを提案します。医師ばかりではなく、看護師、介護士、ケアマネジャー、MSWなどが協働してそれぞれの智恵を集約し、1人の患者の希望を叶えてあげて欲しいと思います。
そして「かかりつけチーム」から共有された患者さんのACPを、必ずそれを引く継ぐ医療機関(急変したときの病院、入所する施設など)は、続けてほしいのです。ACPはリレーのバトンに似ています。医療連携の中で必ず引き継がなければいけないのがACPなのだと思います。
小豆畑丈夫(青燈会小豆畑病院理事長・病院長)[医療と制度⑦]