政府は11月10日、総額で13兆1992億円に上る2023年度補正予算案を閣議決定した。厚生労働省所管分は1兆4151億円。このうち「医療・介護・障害福祉等分野における物価高騰等への対応」として1016億円が計上された。
その内訳は、①食材料費・光熱費高騰への支援(重点支援地方交付金)、②職員の処遇改善に向けた支援(539億円)、③ICT・ロボットの導入等による職場環境の改善(374億円)―などとなっている。
①の「食材料費・光熱費高騰への支援」は、11月2日に閣議決定された「デフレ完全脱却のための総合経済対策」において重点支援地方交付金で対応することが明記。入院時食事療養費が長年据え置かれ、介護保険との差も生じていることから、24年度改定までの間、この交付金で医療機関を支援するとしている。
具体的には、病院と有床診療所に対し、許可病床数に6400円をかけた金額(23年度下半期の半年間分)を都道府県を通じて交付する。例えば許可病床が100床の病院では64万円を交付する計算だ。
これは医療保険の入院時食事療養費の自己負担額が460円(1食当たり)であるのに対し、介護保険の食事の基準費用額は約482円(1食当たり)と約20円の差があることから、当面、その差を埋めるために必要な額として算出されたもの。なお24年度については、総合経済対策の中で「地域医療介護総合確保基金による対応を念頭に、診療報酬の見直しと合わせ、24年度予算編成過程において検討」するとしている。
②の「職員の処遇改善に向けた支援」は、医療・介護分野の賃上げが他の産業に追いついていない現状を踏まえ、緊急の対応として、看護補助者や介護職員の処遇改善を図ることが目的。
このうち看護補助者の処遇改善事業については49億円を計上、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提に、収入を引き上げるための措置を実施するために必要な経費を都道府県を通じて対象施設に補助する。
介護職員の処遇改善支援事業については364億円を計上、同様に賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提に、都道府県を通じて介護事業所に補助する。具体的には、介護職員等ベースアップ等支援加算に上乗せする形で、収入を2%程度(常勤換算で月額平均6000円相当)引き上げるための措置を行う。対象期間は2024年2月~5月の賃上げ分。介護事業所は処遇改善計画書を都道府県に提出、補助金を受けて賃金改善期間後には処遇改善実績報告書を提出する。
介護職員と同様に、障害福祉サービス事業所における福祉・介護職員の処遇改善でも126億円を計上、同じく常勤換算で月額平均6000円の賃上げ相当額を24年2月~5月を対象に補助するとしている。
補正予算案ではこのほか、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援金交付金による支援」(6143億円)、「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に向けた取り組みの推進」(887億円)、「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策の強化」(36億円)などが計上された。