【質問者】
志馬伸朗 広島大学大学院医系科学研究科 救急集中治療医学教授
【抗菌薬の適正使用に基づく「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」として,早期の感染源治療がキーを握る】
わが国の「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016-2020)」では,注射用抗菌薬は2013年と比較して12.7%増加していました。また,黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率は,47%(目標値20%以下),大腸菌のフルオロキノロン耐性率41%(目標値25%以下),緑膿菌のカルバペネム(イミペネム)耐性率16%(目標値10%以下)は目標値からはほど遠い結果であり,多剤耐性菌の減少目標には到達できませんでした1)。そして,国内ICUにおける抗菌薬の使用率を日本集中治療医学会が調査した研究では,ICUに入室しているほぼすべての患者が毎日,抗菌薬の投与を受けていることが報告されました2)。
「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016-2020)」の結果を受け,引き続いて「薬剤耐性(AM R)対策アクションプラン(2023-2027)」が開始されました。このアクションプランでは,黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率20%以下,緑膿菌のカルバペネム耐性率3%以下,カルバペネム系の静注抗菌薬の人口千人当たりの1日使用量20%減をめざしています3)。また,ICUにおける抗菌薬de-escalationの実施率を調査した国際共同研究では,全体では16%でしたが,日本ではさらに低く13%でした4)。さらに,この研究のサブ解析では,72時間以内に適切にde-escalationをしないと多剤耐性菌を発生させる危険性も示唆されました5)。
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