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【識者の眼】「私のがん予防の試み」浅香正博

No.5203 (2024年01月13日発行) P.60

浅香正博 (北海道医療大学学長)

登録日: 2023-12-14

最終更新日: 2023-12-14

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北海道大学医学部教授を定年退職してから、寄付講座としてがん予防内科講座を立ち上げた。講座と言っても教授1名、講師1名、秘書1名の小さな教室であった。しかしこの教室に移ってからは、診療の他、会議、人事などの雑用からほぼ完璧に解放されて、がん予防に関する研究を一心に行うことができ、大変ありがたいことであった。

北海道医療大学に移ってから、これまでのがん予防に関する研究をまとめ、『がん予防の教科書』(潮出版社)という単行本を昨年出版した。この本の中で、がん予防の重要性を個々のがんについて詳細に述べているが、実は、自分自身のがん予防に関してはこれまでほとんど関心なく過ごしてきた。

わが国のがん予防は二次予防である検診が中心であり、最も重要な原因を除去する一次予防についての検討が致命的なくらい遅れている。がんは突き詰めると高齢者に高率に発生するものであり、加齢を阻止しなければ100%の予防は不可能であることは広く知られている。

そうはいっても、実際に自分自身が後期高齢者になり立派ながん年齢に達していることがわかると、多少の抵抗はしてみようかと考えた。重要なのは、原因のわかっているがんの一次予防である。感染症由来のがんは予防可能なので、まずは肝炎ウイルスをチェックしてみた。すべて陰性であった。ピロリ菌は陽性だったので47歳の時に除菌を行った。25年経って胃の粘膜を見たところ、炎症はもちろん、萎縮性胃炎もきれいに改善していた。これで肝がん、胃がんになる確率は限りなくゼロであると思われた。

生活習慣由来のがんの予防は100%達成することは不可能なので、一般論として考えてみた。喫煙は若い頃からまったくしておらず、アルコールの摂取は適度に留めている。がん予防に重要な運動に関しては申し分なく、テニスは30年以上にわたり週2回は行っており、ジョギングも好きで近くの公園をよく走っている。

定年後、マンションから一軒家に移り、畑作業を家内とともにするようになった。手つかずの荒れ地を丸4年開墾した畑は家庭菜園の域を超え、かなりの重労働になっている。しかし、秋には収穫物である野菜がどっさり取れるというおまけがついてくる。運動に加え、新鮮な野菜は翌春まで十分に摂ることができているので、まさに『がん予防の教科書』の記載通りに過ごしてきたようで、前立腺がんや大腸がんのような生活習慣由来のがんになりにくいと期待している。

このような一次予防のみが私のがん予防の試みになっており、これでがんになったならあきらめがつくと思っている。手前味噌のようなことを述べたので、私のがん予防の試みは皆さんの参考にならないかもしれない。

浅香正博(北海道医療大学学長)[一次予防]

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