過疎化の進む地域では、病院がまとまった人通りの期待できる数少ない場所の1つになりつつある。病院を地域に親しんでもらう場所とするために、何らかのイベントを行っているところはかなりあると思うが、ここでは筆者の勤務してきた病院機構の病院祭「あきほ祭り」について述べる。
当機構は2008年の県立市立2病院再編統合で発足した地方独立行政法人だが、運営する日本海総合病院はかなり広い構内駐車スペースと中庭などを有している。
病院祭「あきほ祭り」は2012年から毎年9月に駐車場を一部開放し、新型コロナ蔓延の3年間を除き、これまで9回行われてきた。病院エントランスを会場にした地元バンド演奏やチアダンス、地元出身歌手のミニコンサート、大道芸、マジック等々が行われ、病院前広場では地元農産物の産直、ご当地ラーメン店、お弁当、パン、カレーや台湾、韓国料理店、芋煮、肉まん、水餃子、焼き菓子やドライフラワーの各店、無料サービスの乳酸飲料など、これまで毎年十数店が出店し、出店数は増える傾向にある。
さらに、児童を対象にした病院・医療の体験イベント、広域消防組合や民間会社などの協力による「働く車の展示」と試乗会などが子どもたちに大人気だ。病院機構は風船釣りや射的など縁日を出店し、スタッフは初期研修医など若い医師の担当になっている。
病院職員やその家族からはバザーに出品してもらい格安で販売しているが、バザーは特に人気が高く、開店前に行列ができるほどの盛況である。縁日とバザーの売り上げは、これまで地元の児童養護施設と子育て支援、一時保育などを手がけるNPO法人に全額寄付をしている。第8回からは出店団体からも売り上げの5%を寄付して頂き、これまでの寄付総額は135万5000円を超えた。
楽しそうな子ども連れの人たち、野菜や果物を売る生産者や出店している人たちの笑顔、縁日での子どもたちとの触れ合い等々、事業を通じて体感する地域との触れ合い、見えてくる風景を通じて、病院スタッフの方が何よりの勉強をさせてもらっているのではないかと、回を重ねるごとに思っているところである。
栗谷義樹(地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネット代表理事)[地域の拠点]