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世界標準の疾患である線維筋痛症を認めましょう[提言]

No.5207 (2024年02月10日発行) P.52

戸田克広 (廣島クリニック整形外科)

登録日: 2024-02-13

最終更新日: 2024-02-06

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  • 〔要旨〕線維筋痛症(FM)は,世界の医学界では糖尿病や痛風と同程度に知られた疾患である。PubMedに“fibromyalgia”と入力すれば,その状況がわかる。米国では「こんな症状はFMです。わが病院においで下さい」というテレビコマーシャルが自動車等のコマーシャルの前後に流れているため,一般人でも病名どころか概要を知っている。しかし,日本では医師の間でさえ認められているとは言えない。日本整形外科学会学術総会等の整形外科系の学術集会でFMの演題を発表すると,「そんな疾患は存在しない」という発言が頻繁にあった。また,コロナ禍で開催された講演会で演者が「FMを認めない」という趣旨の発言をしている。米国かぶれした医師が言っているだけである,という陰口も聞いている。知らないのであれば情報提供をすれば問題は解決するが,認めない場合にはそれは無力である。

    1 線維筋痛症(FM)の3つの問題点

    FMの問題点は3つある。1つ目は途方もない有病率であること,2つ目は診断基準となる客観的な検査方法が存在しないこと,3つ目は症状が多彩であり病気のコンビニであること,である。

    ①有病率と診断基準

    FMにはいくつか診断基準があるが,1990年の分類基準(身体5箇所に痛みが3カ月以上あり,圧痛点18箇所のうち11箇所以上に圧痛あり)によると,有病率は約2%である1)。しかし,身体5箇所に痛みが3カ月以上ある(圧痛点の数は問わない)慢性広範痛症の有病率は約10%1),慢性広範痛症の診断基準を満たさない慢性痛の有病率はその1~2倍と英語論文では報告されている1)。それらのすべてがFMの不完全型ではないが,不完全型を含んだFMは途方もない有病率になる。この有病率に疑問を抱く人がいるかもしれない。英語論文では肩こりは通常痛みに含まれる。肩こりを痛みに含めれば,その有病率に納得頂けると推定する。それらにFMと同じ治療を行えばFM以上の治療成績が得られる2)3)。FMは肥満症と同様に,正常と異常(疾患)の間に膨大なグレーゾーン(不完全型の患者)が存在する。不完全型と完全型の治療が同じであれば,その区別をする診断基準には臨床的な意義はなく,論文作成や学会発表の際に意義があるのみである。

    FMには,診断基準となる客観的な検査方法が存在しない。それはうつ病,腰痛症,肩こりと同じである。客観的な検査方法がないから,それらの疾患の存在を認めないのであろうか。

    FMの原因は脳の何らかの異常という説が世界の定説である。FMと健常者あるいはFMではない慢性痛患者と比較した研究で脳の異常が報告されているが,研究によりその異常の部位は異なっている。うつ病と同様に,診断基準になる脳の異常を見つけ出す努力がされている。医学の進歩により,診断基準になる脳の異常が見つかると信じている。

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