1章 ベーチェット病の臨床
1 はじめに
2 日本における近年の疫学動向
3 粘膜病変(口腔内アフタ,外陰部潰瘍)
4 皮膚病変
5 眼症状
6 関節炎
7 精巣上体炎
8 腸管病変
9 血管病変
10 神経病変
2章 ベーチェット病治療薬を使いこなすには
1 コルヒチン
2 アザチオプリン
3 シクロスポリン
4 TNF阻害薬
5 アプレミラスト
3章 エキスパートに聞きたい
1 Nature vs Nurture
2 自己免疫 vs 自己炎症
3 HLA-B51の診断的意義(ASとの比較から)
4 臨床症状における人種差
5 TNF阻害薬の中止は可能か
6 眼科手術の変遷
7 腸管型におけるTNF阻害薬と副腎皮質ステロイドの使い分け
8 MDS合併腸管型ベーチェット病の治療
9 腸管手術の留意点
10 血管病変に対する抗凝固療法
11 血管病変:手術 vs 血管内治療
12 CPNBのバイオマーカーとしてのIL-6について
13 分子標的薬の可能性(TNF阻害薬,PDE4阻害薬以外)
14 ベーチェット病と妊娠
15 小児ベーチェット病の特徴は
16 ベーチェット病におけるTreat-to-target(T2T)は可能か
17 precision medicineに向けて
18 ベーチェット病と感染症 COVID-19の経験から
ベーチェット病はいまだに「原因不明の」という枕言葉を外すことができない全身性炎症疾患です。わたしは長年,この疾患の研究に携わってきました。ですが,「ベーチェット病」vs「ベーチェット症候群」,「遺伝素因」vs「環境因子」,「自己免疫」vs「自己炎症」など多くの疑問が検討されてきましたが,未解決の部分も少なくありません。また,その治療についても希少疾患である上に,重症度や病型が多様であり,エビデンスは十分蓄積されたとは言えません。
そんな中,2020年に,日本ベーチェット病学会,厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業ベーチェット病に関する調査研究班,および難治性腸障害に関する調査研究班は「ベーチェット病診療ガイドライン2020」を作成し,各病型に対応する標準的指針を示しました。本書はその理解を深めるための副読本になりうると考えています。前半部分ではガイドラインの知見もふまえて,疫学,臨床像および治療薬につい最新の知見をまとめ,後半部分ではベーチェット病に関する病態から臨床に至るまでの最近の研究のトピックスを取り上げ,Q&A形式でエキスパートが回答しています。
本書は,ある程度ベーチェット病の診療経験ある医師を対象に執筆され,日常診療上の疑問に答えることを第一の目的としています。さらに,この分野の研究のトピックスに触れることで,本疾患への興味をさらに深め,疑問をリサーチクエッションに転換させ,新たな研究の端緒となることを期待しています。