「日本版DBS」をご存じでしょうか? 子どもを性犯罪から守るための制度で、イギリスのDBS(disclosure and barring service)を参考にした制度です。DBSは、保育士や教師など子どもと関わる仕事への就労希望者に対して、性犯罪歴がないことを証明する「無犯罪証明書」の提出を義務づけるものです。
学校や習い事の先生による生徒への性犯罪の報道が続く中、以前より日本でもDBS導入を要望する声がありました。産婦人科医として性被害の患者さんも診る機会がある身として、防げる被害は防ぎたいと思い、共同発起人として日本版DBSをすべての職業を対象とすることを求めるオンライン署名を行いました。8万1000人を超える署名が集まり、昨年9月に小倉將信こども家庭庁長官(当時)へ提出した際に意見交換させて頂きましたが、子どもを守りたいという想いはみな同じで、法と実務の調整にスピード感をもってご尽力下さっていました。
学校や保育園だけを義務化とすると、塾やスポーツクラブでの被害は防げなくなりますが、子どもに関わるすべての職業を対象とすると、現実的に非常に大変。ただ、それでは不十分という声が議員さんからもあり、法案提出が先送りとなっていました。
今国会への提出を見据えた法案の骨子が、以下の通りようやくまとまりました。
9割以上の再犯者がその範囲内というデータをもとにしており、十分とは言いがたいものの、禁錮以上は10年、罰金以下は5年で刑が消滅する刑法の定めを超えた制度として下さることには感謝していますし、条例違反も対象とすることは非常に重要です。
「任意の認定制」というのは、「義務じゃないよ、やりたいとこだけどうぞ」な骨抜き制度にも、「当然DBS利用しますよね、認定されているところに通わせたいよね」という実質的な義務化扱いにも、どっちにもなりえ得ます。
日本版DBSを迅速に、今の法の下で現実的に可能な範囲で実装して頂き、それが社会にどうインストールされるかは世論次第。社会全体で子どもたちを守っていきたいと思います。
稲葉可奈子(公立学校共済組合関東中央病院産婦人科医長)[日本版DBS]