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福島国際研究教育機構の発足から1年を前に[福島リポート(36)]

No.5211 (2024年03月09日発行) P.52

山下俊一 (福島県立医科大学理事長特別補佐・副学長(国際担当))

登録日: 2024-03-11

最終更新日: 2024-03-06

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2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による災害、およびこれに伴う東京電力(株)福島第一原子力発電所事故(以下「福島原発事故」)から13年が経過しましたが、新たに23年度から浜通り地域にて福島国際研究教育機構(Fukushima Institute for Research, Education and Innovation、以下「機構F-REI」)が発足しました1)。これまで福島復興の推進役を果たしてきた福島イノベーション・コースト構想2)をさらに発展させるものであり、福島県立医科大学(以下「福島医大」または「本学」)ふくしま国際医療科学センター3)の将来構想と密接に関わるため、機構F-REIの概要と現状から、福島復興の着実な歩みと今後の展望を紹介させて頂きます。

はじめに

最初に、本年元旦の能登半島地震に遭遇された被災者の皆様に、衷心よりお見舞い申し上げます。厳しく困難な状況が続いていますが、東日本大震災と福島原発事故という複合災害の経験と教訓は、今回の被災地における災害関連死の予防に向けた救援救済、そして全国からの医療協力という形でも生かされていると確信しております。一日も早い復旧と復興をお祈り申し上げます。

福島医大は、13年前の被災直後から地域医療の要として医療人育成と教育・研究、そして高度医療につながる臨床面での県民健康見守り事業で中心的な役割を果たしてきました。「福島の悲劇を奇跡に」をモットーに、理事長兼学長以下一丸となり復興支援に尽力しています。その代表が12年度に創設されたふくしま国際医療科学センターであり、さらに本学国際化対応の一環として、19年に国際交流センターを改編組織しての、学生の海外派遣と留学生受入れという交流事業であり、これら以外にもグローバルな課題解決に積極的に取り組んでいます。震災を契機に多くの国際機関や海外の大学との交流も深化し、公立大学法人として地域に根ざした国際化をめざすことが本学の責務の1つとなっています。福島の経験と教訓を学び続け、正しい情報を国内外へ発信する必要があることから、「世界の福島」としての役割の一端を担うべく尽力しています。

一方、機構F-REIは、重要課題の各研究分野での出口戦略として産業化やまちづくりと強く結びつけるビジョンを掲げ、それぞれの分野での公募事業を開始しました。これらの研究開発と事業化の推進が地域活性化につながると考えられていますが、本学では、引き続き医療や保健福祉領域における人材確保と育成が第一との考えから、現場重視での教育と研究開発を基本としつつ機構F-REIとの連携を深める予定です。

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