【質問者】井上達朗 新潟医療福祉大学リハビリテーション学部理学療法学科講師
【わが国での脳卒中発症前のフレイルは12.4~29.5%であるが,発症後のフレイルは明らかになっていない】
脳卒中患者のフレイル有病割合を考える際,脳卒中発症時期とフレイル発症時期の両者の関係性については,整理が必要です。脳卒中は身体機能や精神機能に大きな影響が生じる疾患であるため,脳卒中後にフレイルが生じやすくなることは容易に想像がつくと思います。一方で,脳卒中発症後に生じるこのような変化は,これまでは脳卒中の「後遺症」として位置づけられてきたため,この状態をフレイルと表現することが適切かは意見が分かれるところかもしれません。しかし,近年は脳卒中後の状態をフレイルで評価した海外の報告もみられ,その有病率は22~55%と言われています1)2)。
このように,脳卒中後に生じる後遺症も含めた心身機能の変化を広く「脳卒中後フレイル」と捉えることが疾患管理や治療に有効と考えられつつありますが,わが国における脳卒中後フレイルについては報告がなく,現状,その実態はわかりません。
一方,脳卒中発症前の状態をフレイルで評価する試みは,ここ数年来,急速に広まっています。2022年に報告されたメタ解析では,脳卒中発症者の24.6%,つまり4人に1人がフレイル状態であることが報告されています3)。ここに含まれているわが国の調査結果では,脳卒中発症前フレイルの有病率は12.4%と他の報告よりも低い結果でした4)。このような低い有病率となった背景として,脳卒中発症前の評価を質問紙にて行った,という特徴が挙げられます。つまり,脳卒中発症前から機能障害が重度な例や脳卒中発症後に意識障害を生じた例は質問紙に回答できずに除外された結果であるためと考えられます。
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