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先天性胆道拡張症[私の治療]

No.5074 (2021年07月24日発行) P.41

藤野明浩 (国立成育医療研究センター小児外科診療部長)

登録日: 2021-07-21

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  • 先天性胆道拡張症(戸谷分類のIa,Ic,Ⅳ-A型1))(図)2)は,総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張する先天性の形成異常であり3),膵胆管合流異常を合併しており,それが胆道拡張の原因と考えられている。胆道癌の発症率が高いことが知られており,がん発生母体となる胆道を適切に切除することが,治療の基本とされている。

    ▶診断のポイント

    好発年齢は幼児期で,腹痛を主症状とすることが多い。腹痛の原因として頻度が高い疾患ではないため,初発時に診断に至らないことも多い。診察においては黄疸の有無,腹部触診による季肋部圧痛などの理学所見をもとに,次の段階である血液検査(肝胆道系酵素,ビリルビン,アミラーゼ,CRP,白血球数等)3),腹部単純X線,超音波検査等の精査に進むことが肝要である。

    【画像検査】

    超音波検査は非常に有用3)で,肝下面に認める囊胞様構造,内部の沈殿物,肝内胆管の拡張,胆囊壁肥厚など,特徴的な所見を認める。主膵管の拡張を伴う膵臓の浮腫,周囲の液体貯留など膵炎所見を認めることもある。初診時,既に総胆管が破裂しており後腹膜の浮腫とともに腹水を認めることもある。炎症所見が強い場合には緊急処置を行う必要があるため,腹部造影CTを施行し全体像および血管走行などを正確に把握する。急性症状の改善を得たらMR胆管膵管撮影(MRCP)を施行し3),胆道形態,膵管との関係を三次元的に正確に把握し,根治術の準備を進める。幼児においてMRCPは,鎮静を要することや各パーツが小さいことによる検出限界があるため,絶対に必要な検査とはいえない。胆道拡張症であることが確定していれば根治術は必要となり,術中の胆道造影が最も詳細に描出可能な検査であることを考慮したい。

    ▶私の治療方針

    【出生前診断例】

    出生前診断されるのは,総胆管の囊状拡張が著明な場合である。出生後は早期から拡張総胆管内の胆泥の貯留による胆汁流出障害,閉塞性黄疸をきたすことがある。便色に注意しつつ利胆薬内服により閉塞を回避することをめざすが,改善しない場合には新生児期でも根治術を選択する。胆汁流出障害がない場合には,慎重に経過観察し,1歳頃までに根治術を行う。

    【急性発症例】

    腹痛・黄疸・腹部腫瘤の三徴が知られているが,1歳以降に発熱を伴う胆管炎(時に膵炎を合併)にて発症し診断されることが多い。胆管炎が保存的加療にて改善しない場合には経皮経肝胆管ドレナージ(PTCD),胆囊外瘻造設等,胆道ドレナージにより炎症を改善させた後に根治術を行う。

    【偶然発見例】

    超音波検査などで偶然胆道拡張を発見された場合,MRCP等の画像検査を順次行って根治術予定を組む。症状がない年少児の場合も,膵液の胆道への逆流による胆道障害のリスクを軽減するため,可及的早期の根治術を計画する。

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