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【識者の眼】「東洋医学は本当に効くのか?」大野 智

No.5226 (2024年06月22日発行) P.64

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2024-06-10

最終更新日: 2024-06-10

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私事になるが、東洋医学をテーマとした書籍を共著で上梓した1)。執筆にあたって、鍼灸・漢方について改めて調べてみると個人的に強い印象を持ったデータがあったので、今回、書籍で掲載しきれなかった内容を含め本稿で紹介したい。

■鍼灸のエビデンスは?

有効性を検証する上で重要となるランダム化比較試験(RCT)の報告は、PubMedで調べると2024年5月30日時点で鍼(acupuncture)は5862報、灸(moxibustion)は1455報あり、どちらも2005年頃から急増している。これは2006年にWHO主導で経穴の部位が国際標準化されたことが影響しているのかもしれない。コクランレビューにおいても、同日時点で鍼は147件、灸は13件の報告がある。腰痛、肩こりなどの整形外科疾患のみならず、うつ病の症状改善、片頭痛の予防、脳卒中後の機能改善、月経前症候群の症状軽減など多種多様な疾患・症状に対して有効性が示唆されている。ちなみに日本で国家資格となっている鍼灸師が、日本人を対象にして実施したRCTの報告も、厚生労働省の「統合医療」情報発信サイトeJIMに整理されている2)。興味のある方はアクセスしてみて頂きたい。

■鍼灸院の数は?

厚労省「保健・衛生行政業務報告(衛生行政報告例)[令和4年度版]」によると、「はり及びきゅうを行う施術所」が3万3986カ所、「あん摩、マッサージ及び指圧、はり並びにきゅうを行う施術所」が3万8589カ所と、施設所数は合計で7万を超えている。なお、コンビニエンスストアの店舗数は約5.6万カ所であることをふまえると、非常に多くの鍼灸院が日本国内にあることになる。

■漢方? Kampo?

漢方薬は医薬品として承認されており、読者の先生方も患者に処方したり、ご自身で内服したりしたことがあると思う。ちなみに漢方薬の英訳をご存知だろうか? PubMedでは「Kampo」で検索することができる。これは、韓医学の韓薬(korean medicine)と中医学の中薬(chinese medicine)と区別するため、2000年から正式にPubMedの件名標目(見出し語:MeSH)に登場した。現在、PubMedで「Kampo」を検索すると2362件の報告がヒットする。「chinese medicine」の38万9705件と比較すれば後れを取っている形だが、今後、積極的に研究が進められていくことを期待したい。

最後に、鍼灸や漢方はなぜ効くのか疑問を抱いたことがある方もいるのではないだろうか。宣伝になってしまうが、冒頭で紹介した拙著1)では、解剖生理学、分子生物学、脳科学など西洋医学的な視点から、東洋医学が効くメカニズムをひも解くための知見を紹介している。関心のある方は、ぜひ手にとって頂けると幸いである。

【文献】

1)大野智, 他:東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム(ブルーバックス). 講談社, 2024.

2)厚生労働省 eJIM公式サイト:日本鍼灸エビデンスレポート.
https://www.ejim.ncgg.go.jp/doc/doc_e01.html

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法]

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